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「死者の日」の骸骨たちが叫ぶたび


「死者の日」の骸骨たちが叫ぶたび色を深めるマリーゴールド

  /『死』雀來豆 #うたの日 2016年07月26日 #tanka
   http://utanohi.everyday.jp/open.php?no=848b&id=16


木馬とカラベラbyしま・しましま2

(・・・しま・しましまさん がイラストを描いてくれました。深謝)


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My Satellite/Jonathan Carroll

medium.com からの引用

My Satellite

The other day someone wanted to know what I feel when asked a question about a book I wrote twenty or thirty years ago. I said it’s like looking at a deep space satellite through a powerful telescope at night: Still alive and moving out there, brightly flickering, but so far away that it’s hard to see with the naked eye.

Jonathan Carroll



作家にとって、20年前、30年前に書いた作品について語るというのはそんな感覚なのかと、ようくわかったけれども、邦訳が10年も、20年も出ていないことについてはどう思うのかと、訊いてみたい気もしてくるのである。


ドゥシャン・カーライの「アリス」

去年のことである。仕事の途中、大手町を歩いていたら、逓信総合博物館で「スロヴァキアの切手展/ドゥシャン・カーライとブラチスラヴァの絵本文化」というポスターを見かけた。30分くらいというつもりで入ったのだが、これがとても素晴らしい展示でありました。入場料はたったの110円也、郵政省はふとっぱらである。


img_778690_49903083_31.jpg

ドゥシャン・カーライは切手の原画を何枚も描いた。スロヴァキアの切手である。それがとても美しい。こんなものである。(画像左、「郵政切手発行150周年」2000年、画像右、「ブラチスラヴァ世界絵本原画展」1995年)


カーライ

カーライは、有名な絵本作家でもある。日本でも、「どきどきおんがくかい」、「かえるのおんがくたい」、「魔法のなべと魔法のたま」、「12月くんの友だちめぐり」などが出版されている。


しかし、なんといっても素晴らしいのは「アリス」の挿画である。
こんな不思議なアリスの絵は、はじめて見た。こんな絵である。
もちろんひと目で魅せられたのでありました。

img_778690_48521964_5.jpg


ひとめで魅せられた末に、どうしてもほしくなったこの「アリス本」、とうとう手に入れました。
それが、『ドゥシャン・カーライのイラストによる「不思議の国のアリス&鏡の国のアリス」』
(チェコ語版;Lewis Carroll/Dusan Kallay 「Alenka v kraji divů a za zrcadlem」)という本。


★P1200113


・・・こんな本です。チェコ語が読めるわけではないが、そこはそれ「アリス」ですから、なんとなく雰囲気でわかります。そしてなによりも、絵を見ているだけで充分という気持ち。
それにしても、この奇妙な車輪の付いた乗り物??、・・・「アリスの国の自転車」だとでもいうのでしょうか???


立原道造、ヒアシンスハウス


立原道造





立原道造は、優秀な建築家でもあった。
晩年に、自ら設計図(スケッチ)を描いて、「沼のほとりに、ちひさい部屋をつくる夢」を語った。
そしてそれを「ヒアシンスハウス」と名付けた。
もちろん、その夢は叶わないまま、早逝したのだったが。


しかし、今、「ヒアシンスハウスに行きたい」と勝手なイメージを広げて遊ぶことはできない。
というのは、現実にそれが建てられてしまったからだ。

立原道造2
(ヒアシンスハウス、別府沼公園)


実際に見てみると、とても美しい建物である。たぶん立原が週末を静かに過ごすことをイメージして設計したプランがそのまま生かされているのだと思う。しかし、立原の書いた文章や家のスケッチを見て楽しむだけの方が良かったかもしれないという気持ちもある。

    光あれと ねがふとき
    光はここにあつた!
    鳥はすべてふたたび私の空にかへり
    花はふたたび野にみちる
    私はなほこの気層にとどまることを好む
    空は澄み 雲は白く 風は聖らかだ
      (盛岡ノート、「アダジオ」)


立原は、晩年の一時期、岩手に滞在した。そこで見た情景を「盛岡ノート」に記している。
そして、こんな美しい詩や文章を残している。賢治や啄木とは違った眼でこの土地をとらえている。後に松本俊介が描いたのとも違う盛岡を描いている。
だから、わたしは、夢がリアルになってしまった別所沼(ヒアシンスハウス)よりも、むしろ未だ夢や詩の中でしか見たことのない盛岡の方へ行ってみたい気がするのである。




☆ブコウスキー、パルプ


ブコウスキー



ブコウスキーの「パルプ」、
19994年の作品、
ということは、ブコウスキーが74才、最晩年の作品である。
無頼派と称された作家にしては、ずいぶん長生きしたわけであるが、さすがに、とんでもない本を書くものだ。

「パルプ」というのは、古きアメリカの「安手の三文雑誌」を指す、(タランティーノの映画「パルプフィクション」と所以は同じ)あえて安っぽい物語を安っぽく語ろうという手法が、全編を通じて貫かれている。

物語の舞台は、90年代のLA、
探偵は、ニック・ビレーン、出鱈目で無能、
依頼者は、死神の女性、
探す相手は、作家のセリーヌ(1894-1961)、
とっくに死んでいるフランスの作家を探せという仕事、途中、付きまとわれて困っているので宇宙人を追い払ってほしいというような別の依頼も加わる。・・・これだけで、この小説の輪郭は、くっきりとする。つまりは、めちゃくちゃなのである。あらすじを書き留めるのも空しい。

ところが、これが、読ませるのだから、小説は面白い。
一見、乱暴で粗雑なようで、きちんと、エンタテイメントの読み物として成立しているし、さらには、現代文学の情況が透けて見えたりもする。ろくでなしの探偵が、しょうもない捜査に没入する姿を、投げやりな心理描写と、卑語猥語いっぱいの会話で、見事に描ききった怪作。誰もが、あっというまに魅せられてしまうだろう。

画像は、絶版になっていた00年の新潮文庫版。
表紙のアメリカンコミックス調の絵は、ゴッホ今泉。翻訳は、柴田元幸。
2016年、これが、ちくま文庫から復刊となった。(イラスト、装丁は変更されている)
未読の方にとっては、まずはメデタイ。
既読の人間には・・・、もちろん再読のきっかけとなってこちらもメデタイのである。



「夜の発明・力をあわせたくない日」 (未來、彗星集 2016年6月号掲載分)


『未來、彗星集』 2016年6月号掲載分 (10首)


「夜の発明・力をあわせたくない日」 ヨシダジャック

声がまだ発明されていないころ何処にいたのかぼくらの歌は

抽斗に閉じこめられた金髪の少女のように光るたましい
 
きみがまだ発明されていないころ何処にいたのかそのたましいは

夜市で熟れた葡萄とたましいを取り換えているメフィストフェレス

夜がまだ発明されていないころ何処にいたのかぼくらの夢は

熊島に住むもの 飛べぬ熊 力のない熊 その恋人の熊

力を合わせたくない日なんです という言いわけが通った日、雨

顔色の悪い女神がやって来て「感じなさい」と言った夕暮れ

いまきみが感じているのは森さんの手でつくられたにせの重力

初めての熊と僕との握手会 剥製の手に力こもらず


※選者の加藤治郎さんから、次のような評をいただきました。感謝します。
『言葉が連鎖する一連である。夜が発明されるものだと思うとき、それは不思議な存在となる。まだ居場所のない夢が何処かを彷徨う。そんな自在な想念を導く楽しさがある。』


1008.イーユン・リー 黄金の少年、エメラルドの少女 (bicycles in fiction Ⅱ)


黄金の少年、エメラルドの少女


イーユン・リーの短篇集『黄金の少年、エメラルドの少女』(2010)、
いつもながら巧みな作品が並んでいて、堪能させてくれる。
巧みさが、小説の面白さをまったく損ねていないことも、特筆すべきだと思う。
優しさや、記憶や、孤独や、未来が、これ以上はないと思えるほど鮮やかに描かれていてこころを打つ。

窓の外を見た。薄茶色の分厚いコートを着た女が自転車に乗って、通りの長い車列の間を縫うように進んでいく。自転車の荷台に取りつけた竹製の椅子に、灰色のストールにくるまれて性別がわからない小さな子供が座っていたが、周囲の車からいらだたしくクラクションを鳴らされても、母親同然に平然とした顔をしていた。寒楓はその子供を指さしてみせた。彼も思余も、こんなふうに北京の道をたどってきたはずだ。彼は母親の後ろ、彼女は父親の後ろで。
(篠森ゆりこ訳、河出書房新社、2012)



そして、読後の幸福に浸っていると、さらに面白いものに巡り合った。
「訳者あとがき」の中に、作家自身の印象深い発言が引用されているのを見つけたのである。
ここで、彼女は、彼女の小説術について語っている。

物語を書いたら、その物語が外へ出かけていって他の物語と語り合うというふうに考えたいんです。私の物語が世に出て自立するための場をウィリアム・トレヴァーの物語が作ってくれたので、私の物語はたえずトレヴァーの物語と語り合っています。たとえば表題作「黄金の少年、エメラルドの少女」は、彼の「三人〔Three People、未邦訳〕)という物語と語り合うように書きました。
もちろん人間と同じで、物語は親しみを感じる相手とだけ心地よくつき合っているわけにはいきません。他の物語と議論したり、ときには論争したりしたいのです。
(篠森ゆりこ訳)


つまり、わたしも考えたわけである。
わたしが(拙い)短歌を詠んだら、その短歌が外へ出かけていって他の短歌と語り合うというふうに考えればいいのだと。これって、結構、だいじな発見かなと。



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今江祥智と長新太


紙のお月さま  タンポポざむらい  魚だって恋をする


今江祥智と長新太は、児童小説、絵本、童話等々で、50年に渡って、約60!の作品を作り上げてきた。
超・新太ファンを自称するわたしにとっては、この60冊、全てを読みたいと思うのは当然なのであるが、実は、これまで、自慢できるほど読んではいなかった。今江さんの本に苦手意識が強かったのである。

それでも10冊程度は読んだだろうか。お気に入りは、時代物の児童小説、「たんぽぽざむらい」と「魚だって恋をする」の二冊、そして童話の「紙のお月さま」のシリーズである。

「たんぽぽざむらい」
髪がぬけていつのまにかタンポポのわた毛のような頭になってしまった青年一平太。侍一平太の凛とした一生を描いた作品。

「魚だって恋をする」
初恋は、いつの時代も不自由だ。その少女は、新太郎の目の前から一瞬で消えた!小料理屋「まい」を舞台に、新太郎のもやもやの日々が始まる。 新太郎の「初恋」を描く。

「紙のお月さま」
家出犬タマテバコがひろわれたのは、父と娘の二人暮らしのおかしな家。犬が見た15年間のその家での生活とは……。


今江さんの物語は、とても端正である。(松井今朝子さんの時代小説に似ているかもしれない)
こども向けの本と思えないほど、きっちりとしている。笑える本が好きなわたしのようなものにとっては、ちょっとスクエアすぎるかもしれない。しかし、ちょっとしたきっかけで、どんどん読めるようになった。今では、大好物である。

今では、「今江祥智・文+長新太・絵」という表記を見ただけで、読んでみたくなる。すぐ手にとって、図書館なら貸し出しカウンターへ、本屋ならレジへ向かう。もちろん、絵を見るだけじゃない。きちんと物語の方も読む。
しかし、新作は読めない。いつのまにかお二人とも故人である。60冊ではなく、もっともっと書いてほしかったと思う。



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762. ボリバル侯爵 (ぼくらの本が歌う時)


ボリバル侯爵

レオ・ペルッツの 「ボリバル侯爵」(1920)、
百年前に書かれたこの長編は、今も、ほんの少しも風化せず、まるでリョサの新作かボラーニョの遺作のように刺激的である。
見事なプロット、鮮やかなストーリーテリング、一反読み始めれば、たったの300ページ、ほんの2時間ほどで読み切って、ため息をつく。もっとゆっくり読めばよかった。

 わたしたちは錯乱の虜となった。市に迫る脅威も、<皮屋の桶>も、合図を待つゲリラもすべて忘れた。誰かの悪態が聞こえた。血が凍るほど瀆神的な言葉だった。狂犬病にやられた犬みたいな咆哮がそれに和した。ブロッケンドルフとドノプがオルガンめがけ、怒涛のように木の階段を駆け上がるのが見えた。
 ひとりが鞴をを踏み、ひとりが鍵盤を叩いた。オルガンが鳴り響き、タラベラの歌が丸天井に反響して部屋に満ちた。わたしたちは四人いっしょになって、歌いに歌いまくった。エグロフシュタインが乱暴に体を揺すり拍子をとった。そしてオルガンは歌を圧し潰すばかりに轟きわたった。
(垂野創一郎訳、2013、国書刊行会)


物語の舞台は、19世紀初のスペイン、ナポレオン軍に加わって遠征してきたドイツ連隊が、現地のゲリラと戦う・・・。
と、こんなふうに書けば、古風な歴史小説だと誤解されるかもしれない。
そうではない、決してそうではなく、これは、歴史に題材を取った幻想小説、
いや、幻視小説と言えばいいのだろうか。ともかく、
とてつもなく面白くて愉しくて、読み終わるのがもったいない本なのである。



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