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301. オクタビオ・パス 書くこと

「書くこと」は、詩集 『閉ざされた門』(1938-46)に所収。
オクタビオ・パス、20代から30代にかけての作品である。

いかなる孤独な時でも、
紙のうえにペンが書くとき、
誰がそのペンを導くのか?
ぼくに替って書いている者は誰に宛てて書いているのか?
唇と夢でつくられた岸辺、
不動の丘、湾、
永遠に世界を忘れようとする肩なのか?

ぼくのなかの何者かが書き、ぼくの手を操り、
ひとつの言葉を選び、立ち止まり、
青い海と緑の山の間でためらう。
氷のような熱意で
ぼくの書くものを熱視する。
この厳正な火のなかで一切が燃やされる。
しかしこの裁判官も犠牲者であり
ぼくを罰すると同時に、自らをも罰する。
彼は誰に宛てても書かないし、誰をも呼ばない。
彼は自分自身に宛てて書き、自分自身に没頭し、
そして自分を救い、そして自分自身に戻る。
(真辺博章訳)



この簡潔で明晰で静かな熱意にあふれた、若きパスの「詩人宣言」とでもいうような作品が、わたしは大好きである。邦訳は、土曜美術社版、世界現代詩文庫『オクタビオ・パス詩集』に収録されている。



PS. メキシコについて記事を書くとき、わたしがいつも念頭においているのは、パスの次のような言葉である。(『孤独の迷宮』、1960)

「アメリカ人がメキシコに、
メキシコを探ろうとしたことは一度もない」 

もちろん、この言葉はここで終わりではなくて、”彼らがメキシコに探し求めたのは・・・”と続いていくのだが、あえてそこは書かずにおこうと思う。警句として、頭のなかで響かせておこうと思う。


300. ノヴァーリス 青い花

ノヴァーリスの「青い花」(1802)は、未完の長編である。続編が読みたいと思うと切望すると同時に、未完のままでよかったと、そんなふうにも思える作品である。それはもちろん、続きを読むのが惜しいほど、美しい作品だからである。

どうやら青年は暗い森をひとりで歩いていくところだった。ほんのときおり陽光が緑の網目をとおしてほんのり射しこんできた。 (中略)限りない光彩を放ってさざ波がひろがる池へ、青年は近づいていった。(中略)
このとき青年がいやおうなしに惹きつけられたのは、泉のほとりに生えた一本の丈の高い、淡い青色の花だったが、そのすらりと伸びかがやく葉が青年の体にふれた。この花のまわりに、ありとあらゆる色彩の花々がいっぱい咲きみだれ、芳香があたりに満ちていた。青年は青い花に目を奪われ、しばらくいとおしげにじっと立っていたが、ついに花に顔を近づけようとした。すると花はつと動いたかとみると、姿を変えはじめた。・・・
(青山隆夫訳)


「青い花」は、夢の物語である。誰の夢か、どこからが夢か、いつ見た夢か、ふと聞こえてきた話も夢か、少女を恋したのも、青い花をみたのも夢なのかどうか、そんなことを考えるまもなく読みとおしてしまうほど、美しい作品なのでありました。


(kind of blue、完)


299. レーモン・クノー 青い花

物語の冒頭、オージュ公とデモステーヌ(ペルシュ産の名馬)との会話は、いきなり核心にふれる。3ページ目にして早くも、”青い花”が登場するのである。


「おお!わがデモよ!」とオージュ公は歎かわしげに言った。「わしはこんなにも悲しく、憂鬱的であるぞよ」
「あいかわらず歴史でございますか?」とステーヌは言った。
「歴史がわしの心のうちですべての喜びを枯らしてしまうのじゃ」と公爵は答えた。
「元気をお出しあそばせ、殿さま!元気をお出しを!さあ鞍にお乗りあそばせ、そしたら散歩に出かけることにいたしましょう」
「いや、まさしくそうしようと思っていたところじゃ。そしてそれ以上のことをな」
「と、申しますと?」
「幾日か旅に出るのじゃ」
「これはたいへん気に入りました。で、殿さま、いずこへお連れいたしましょう」
「遠く!遠く!ここでは泥がわれらの花々でできておる」
「・・・青色の、でございましょう。でもとにかくどこへ?」
「よきように計らえ」(滝田文彦訳)


「青い花」(1965)、発表当時はすこぶるつきの実験小説であったはずだが、今読むとむしろその独特の可笑しさに感嘆する。遊びの感覚が独特で飛びぬけている。ラブレーがちょっと400年ほど長生きをしていればこんなふうな小説を書いたかもしれないと思ったり、主人公の二人が入れ替わりに登場するってのは歌舞伎の二役早変わりのようで愉しいったらないなとか、そんなことを思っているうちに読み終わってしまう。だから、ちょっともったいなかったかな。


青の小説 百選 (記事索引③、201~300)

(kind of blue)

201. フランツ・ブライ 文学動物大百科(12/23)
202. マルグリット・ユルスナール 青の物語
203. バルザック 才知ある人々に模範として贈る二匹の虫の恋
204. E.T.A.ホフマン 黄金の壺
205. アルフレッド・ポルガー すみれの君
   エジプト・ファイアンス 
206. ユイスマンス さかしま
207. デュマ・フィス 椿姫
208. ルナアル ぶどう畑のぶどう作り
209. サリンジャー ド・ドーミエ=スミスの青の時代
210. 舞城王太郎 やさしナリン(1/1)
  スクロヴェーニ礼拝堂

211. 川原泉 空色の革命
212. バラージュ ほんとうの空色
213. 吉田健一 金沢
214. 吉岡実 サフラン摘み
215. ジョルジュ・バタイユ 青空
216. マーク・トウェイン アオカケスの困ったこと
   幻影を凝視する人
217. ラング童話集 イアン・ジーリハが青いハヤブサをつかまえた話
218. グレッグ・イーガン プランク・ダイヴ
219. スチュアート・ダイベック ブルー・ボーイ
220. スティーヴン・ミルハウザー 青いカーテンの向こうで
   カーティス・ボタニカルマガジン

221. ノディエ トリルビー
222. トルーマン・カポーティ カメレオンのための音楽
223. ケストナー エーミールと三人のふたご
224. ジャック・フィニイ 悪の魔力
   藍色瑠璃双六子(あいいろるりのすごろくし)
225. プルースト 失われた時を求めて
226. 紫式部 源氏物語 澪標
227. ルイス・キャロル 鏡の国のアリス (2/1)
228. シュトルム みずうみ
229. マリーシャ・ペスル 転落少女と36の必読書
230. エイミー・ベンダー 指輪
   青いクレヨン

231. ジャン・コクトー 自画像
232. アンデルセン 絵のない絵本
233. アーネスト・ヘミングウェイ 老人と海
   燕子花図
234. ゴールズワージー 林檎の樹
235. メーリケ 旅の日のモーツァルト
236. マルグリット・ユルスナール 老絵師の行方(東方綺譚)
   金峯山寺 金剛蔵王権現
237. マンディアルグ アディーブ
238. マルグリット・デュラス 青い眼、黒い髪
   スライム
239. ガルシア=マルケス 青い目の犬
240. アマード・ネルボ 落ちた天使
   豆絞り

241. 樋口一葉 たけくらべ
242. クレア・キーガン 青い野を歩く
   朝顔
243. 梨木香歩 リュウノヒゲ (家守綺譚)
244. オラクルナイト、ポール・オースター
   舟越桂
245. ジャン=アンリ・ファーブル 昆虫記
   ヤン・ファーブル  The Years of the Hour Blue
246. 泉鏡花 天守物語
   アーノルド・ローベル いろいろへんないろのはじまり
247. カフカ 中年のひとり者ブルームフェルト
248. コレット 青い麦
   露草
   青牛に乗った老子
249. ナボコフ 初恋
250. ろばの皮 (ペロー童話集) (03/01)
   青い温泉、その1

251. 歌姫空色のサラーマー(千一夜物語)
252. シュペルヴィエル 空のふたり
253. 澁澤龍彦 ねむり姫
   桂離宮 茶室
254. ボードレール 髪 
   諸星大二郎 孔子暗黒伝
255. 干宝 火星人の少年(捜神記)
256. サキ 刺青奇譚
257. ウィリアム・トレヴァー アフターレイン
   デルヴォー 受胎告知
258. ジェラール・ド・ネルヴァル シルヴィ
259. ライマン・フランク・ボーム オズの魔法使い
260. ジャック・ロンドン 影と閃光

261. アンドリュー・ヴァクス ブルー・ベル
262. リチャード・フラナガン グールド魚類画帖
263. デイモン・ラニアン ブロードウェイの天使
264. サルバドール・プラセンシア 紙の民
265. ルベン・ダリオ マブ女王のベール
   飛燕草
266. 幸田文 濃紺
267. アントニオ・タブッキ 空色の楽園
268. リラダン ヴィルジニーとポール
269. トーマス・オーウェン 青い蛇
270. ターハル・ベン=ジェルーン 青い蛇

271. コニー・ウィリス 月がとっても青いから
   サヴォア邸のブドワール
272. トルーマン・カポーティ 誕生日の子どもたち
273. 青い鳥(聊斎志異)
274. モンゴメリ 青い城
275. イタロ・カルヴィーノ 無色の時代
276. 稲垣足穂 天体嗜好症
277. トマス・ハーディ 青い瞳
   OUT TO LUNCH!
   ガラスの檻(Glass Enclosure)
278. ヘッセ 美しきかな青春
279. フーケ ウンディーネ
280. グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ シャンタラム

281. チェスタートン 青玉の十字架
  IKEAで青いものを買う、①
  IKEAで青いものを買う、②
282. エステルハージ・ペーテル 青鬚公の素晴らしい人生
☆   フリーダ・カーロ博物館
283. 青頭巾(石川淳、新釈雨月物語)
284. ル・クレジオ 地上の見知らぬ少年
285. アナトール・フランス 青ひげの七人の妻
286. ウィリアム・アイリッシュ 青ひげの七人目の妻
   朝顔、其の二
   朝顔、其の三
287. ユーディット・ヘルマン 冷たい青
288. メイ・サートン 海辺の家
   銀河鉄道の夜
289. オクタビオ・パス 青い花束
290. テネシー・ウィリアムズ 青い子どもたちの原っぱ
   ロセッティ ジェーン・モリスの肖像

291. ダニエル・ぺナック 片目のオオカミ
292. 萩原朔太郎 青猫
   人魚
293. カート・ヴォネガット パウダーブルーのドラゴン
294. リング・ラードナー 微笑がいっぱい (4/1)
   コールデコット 森のなかのこどもたち
295. ボルヘス 青い虎
296. マヌエル・プイグ 天使の恥部
297. フェルナンド・ペソア 不穏の書
   カフカのノート/カフカの家
298. チェーホフ 幸福
   INTERNATIONAL KLEIN BLUE
299. レイモン・クノー 青い花
300. ノヴァーリス 青い花

(kind of blue、完)



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図書館小説 百選 (記事索引②、101~200)

(Library at night)

101. アルベルト・マングェル 図書館 愛書家の楽園 (8/11)
102. リチャード・ブローティガン 愛のゆくえ
  池波正太郎記念文庫
103. ローレンス・ブロック 泥棒は図書室で推理する
104. エドワード・D・ホック 怪盗ニック対女怪盗サンドラ
105. ジョージ・マクドナルド リリス
  円形の書架
106. ダニロ・キシュ 死者の百科事典
  図書委員の腕章(09/01)
107. ボルヘス 砂の本
108. 太宰のラプンツェル
109. フィリップ・ロス さようならコロンバス
110. カニグズバーグ 魔女ジェニファとわたし
111. G・A・エフィンジャー 時の鳥
  司馬遼太郎記念館
112. A・E・ヴァン・ヴォクト 宇宙船ビーグル号
113. ルーディ・ラッカー 虚空の芽
114. クリスティ 書斎の死体
115. ラヴクラフト ダニッチの怪
116. サキ 聖ヴェスパルース伝
117. 中島敦 文字禍
118. ターハル・ベン=ジェルーン 聖なる夜
  ジャネット・ウィンター ろばのとしょかん
119. ウィリアム・トレヴァー グレイリスの遺産
120. ジャネット・ウィンターソン オレンジだけが果物じゃない
121. ウィリアム・サロイヤン 人間喜劇
122. 天沢退二郎 光車よ、まわれ!
123. トルーマン・カポーティ ティファニーで朝食を
124. オーガスト・ダーレス 図書館の殺人鬼
125. ウィルマー・H・シラス かえりみれば
126. チャイナ・ミエヴィル 鏡
  書斎のドン・キホーテ (10/01)
  デルヴォーの壁画
127. ポール・オースター ムーン・パレス
128. ロバート・W・チェイムバーズ 黄の印
129. ヘッセ 美しきかな青春
130. ダグラス・アダムス 銀河ヒッチハイク・ガイド
131. ハーラン・エリスン 小人たちと働いて
132. チェスタトン 飛ぶ星 (ブラウン神父シリーズ)
133. ジュノ・ディアス オスカー・ワオの短く凄まじい人生
134. ルナール 鼠 (博物誌)
135. J.R.ヒメネス ボール紙のプラテーロ/秋の飾り
136. セルバンテス ドン・キホーテ
137. ゴア・ヴィダル 書斎のご婦人たち
138. 宮沢賢治 図書館幻想
139. 危険書庫
140. ロアルド・ダール マチルダは小さな大天才
141. ラブレー パンタグリュエル
142. ドロシー・L・セイヤーズ 学寮祭の夜
143. レイモン・ジャン 読書する女
144. ケリー・リンク マジック・フォー・ビギナーズ
  コールデコット ハートのクイーン (11/01)
  書斎の聖ジェローム
145. ヴェルヌ 海底二万里
146. バーバラ・ピム 秋の四重奏
147.  チャールズ・シミック 異国の旅人
148. ミリヤン+パストール まだ名前のない小さな本
149. ミシェル・ビュトール 託けを運ぶ女たちの行列
150. アナトール・フランス  シルヴェストル・ボナールの罪
151. E.T.A.ホフマン 砂男
152. ナボコフ アカザ
153. ロベルト・ボラーニョ 野生の探偵たち
154. キャロル・エムシュウィラー 石造りの円形図書館
155. エイミー・ベンダー どうかおしずかに
156. 出久根達郎 御書物同心日記
157. アンドルー・ラング 書斎
  「書斎の作家」の肖像
158. ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア たったひとつの冴えたやりかた
159. トーマス・マン 魔の山
160. ジャン・コクトー 大股びらき
161. メアリー・マッカーシー アメリカの鳥
162. マヌエル・ムヒカ=ライネス 航海者たち
163. 中井英夫 薔薇の夜を旅するとき
164. The Library Lions
165. スタニスワフ・レム 完全な真空
  Visit to a Library in Venice
166. ランペドゥーサ 山猫
167. J・B・モートン 書斎に死体が・・
168. スティーヴン・リーコック がんばれガートルード、または純真な十七歳
169. マーク・トウェイン トム・ソーヤーの冒険
170. ポオ モルグ街の殺人事件
171. シオドア・スタージョン [ウィジェット]と[ワジェット]とボフ (12/01)
  まどのそとの そのまたむこう (Amazing Libraries①)
  ポプラ・クリーク公共図書館 (Amazing Libraries②)
172. マルグリット・ユルスナール 無名の男
173. マイケル・イネス ロンバート卿の蔵書 
174. ロバート・シルヴァーバーグ 世界の終わりを見にいったとき
175. 岡本綺堂 半七捕物帳・お文の魂
176. レイ・ブラッドベリ 華氏451度
177. ダニエル・ぺナック カモ少年と謎のペンフレンド
178. エリナー・ファージョン ムギと王さま
179. デイヴィッド・ゴードン 二流小説家
180. イタロ・カルヴィーノ 冬の夜ひとりの旅人が
181. ヘミングウェイ 兵士の故郷
182. ユイスマンス さかしま
183. フローベール 愛書狂
184. エリザベス・ボウエン 相続ならず
185. シャーウッド・アンダソン ワインズバーグ・オハイオ
186. イアン・サンソム 蔵書丸ごと消失事件
187. アリス・マンロー 小説のように
188. エリック・マコーマック ミステリウム
189. マンディアルグ 大理石
190. スティーヴン・ミルハウザー エドウィン・マルハウス
191. ジャスパー・フォード 文学刑事サーズデイ・ネクスト
192. アルフォンス・ドーデー 法王のらば
193. ボルヘス バベルの図書館
194. フィリップ・K・ディック 逆まわりの世界
195. スティーヴン・キング 図書館警察
196. シュテファン・ツヴァイク 書痴メンデル
197. リラダン イシス
198. ウンベルト・エーコ 薔薇の名前
199. ワシントン・アーヴィング アルハンブラ物語
200. ジョナサン・キャロル 死者の書


(Library at night、完)



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自転車小説 百選 (記事索引①、01~100)

(記事索引①、01~100)(bicycles in fiction)

天使たちが/ぼくの朝飯のために/自転車で運んで来る/パンとスウプと花を
(堀辰雄、「詩」)


01. エーリヒ・ケストナー エーミールと探偵たち (04/23)
02. カポーティ クリスマスの思い出
03. アンリ・トロワイヤ 自転車の怪
04. フィリパ・ピアス キイチゴつみ
05. J・D・サリンジャー シーモア-序章-
06. A・スカルメタ イル・ポスティーノ (05/01)
07. ジャリ 超男性 
08. マルセル・プルースト 失われた時を求めて
09. レーモン・クノー イカロスの飛行
10. フラン・オブライエン 第三の警官  

11. ウラジミール・ナボコフ じゃがいもエルフ
12. 吉田健一 東京の昔
13. ティム・プラット 魔女の自転車
14. ウィリアム・サローヤン 自転車泥棒
15. H・G・ウェルズ 宇宙戦争
16. イーヴリン・ウォー 大転落
17. アルフ・マクロフラン 自転車スワッピング
18. 吉岡実 自転車の上の猫
19. レイ・ブラッドベリ 酔っ払い、自転車一台所持
20. 吉田秋生 海街diary

21. イタロ・カルヴィーノ マルコヴァルドさんの四季
22. カミ ルーフォック・オルメスの冒険
23. ガルシア=マルケス わが悲しき娼婦たちの思い出
  ホセ・グアダルーペ・ポサダ 死者の日の骸骨の自転車乗り
24. スティーヴン・ミルハウザー ロバート・ヘレンディーンの発明 (06/08)
25. ルーシー・M・ボストン ふしぎな家の番人たち
26. ジョナサン・レセム 孤独の要塞
27. ジョン・スラデック 蒸気駆動の少年
28. フリードリヒ・グラウザー クロック商会
29. チェーホフ 箱に入った男
30. ダイ・シージエ フロイトの弟子と旅する長椅子

31. スチュアート・ダイベック ブルー・ボーイ
32. ヘミングウェイ 追い抜きレース
  フェルナン・レジェ 偉大なジュリー
33. サルマン・ルシュディ 無料のラジオ
34. 稲垣足穂 タルホ拾遺
35. フィリップ・ターナー ハイ・フォースの地主屋敷
36. ジェイムズ・サーバー 自転車に乗った提督
37. アリス・マンロー 浮橋 
38. ジェローム・K・ジェローム 自転車の修繕
39. 石川淳 明月珠
40. マンディアルグ オートバイ

41. リック・バス 見張り
42. チャールズ・M・シュルツ ピーナッツ
 横尾忠則 「東京Y字路」写真集
43. R・ラープチャルーンサップ プリシラ (07/01)
44. ジョン・バンヴィル バーチウッド
45. ウェルマン&ウェルマン シャーロック・ホームズの宇宙戦争
46. コナン・ドイル あやしい自転車乗り
47. サマセット・モーム お菓子と麦酒
48. ジョバンニ・グァレスキ 陽気なドン・カミロ
49. ウィリアム・ギブスン ヴァーチャル・ライト
50. グラント・アレン テムズ・ヴァレイの大災害 

51. ジョルジュ・バタイユ 眼球譚
★  デ・キリコ 街の神秘と憂鬱
52. ブルガーコフ 巨匠とマルガリータ
53. ドロシー・L・セイヤーズ 五匹の赤い鰊
54. ロレンス 息子と恋人
★  タマーニョ PEUGEOTのポスター
55. エリザベス・ボウエン エヴァ・トラウト
56. 夏目漱石 夢十夜
57. パヴェーゼ 丘の上の悪魔
58. マーク・トウェイン アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー
59. アイリス・マードック 赤と緑
  マルク・シャガール 自転車乗りたち
60. カズオ・イシグロ わたしたちが孤児だったころ

  松本竣介 街(自転車)
61. マルセル・エイメ 七里のブーツ
62. コレット 青い麦
  鏑木清方 築地川 
63. ハインライン 宇宙の呼び声
64. ロアルド・ダール クロウドの犬
65. バーナード・フィッシュマン 自転車で月へ行った男
  パブロ・ピカソ ゲームと読書
66. アール・ラヴレイス ドラゴンは踊れない
67. ディラン・トマス ぼくとぼくの自転車
68. フィリップ・K・ディック スキャナー・ダークリー
  レオナール・フジタ ポスター貼り
69. V・S・ナイポール 神秘な指圧師
70. リチャード・パワーズ 舞踏会へ向かう三人の農夫

  Bicycle deck (US PLAYING CARD COMPANY)
71. スティーヴ・エリクソン 彷徨う日々
  ミュシャ ペルフェクタ自転車 (08/01)
72. アニター・デサイ デリーの詩人
★  エドワード・ホッパー French Six-day Bicycle Rider
73. スザンナ・タマーロ 愛って、なに?
  ロバート・ラウシェンバーグ Riding Bikes
74. グレアム・グリーン おとなしいアメリカ人
75. ブルース・スターリング 自転車修繕人
★  トム・サックス ワッフル・バイク
76. フラバル わたしは英国王に給仕した
77. サミュエル・ベケット モロイ
★  Kiehl’s  Mr.Bones on bike
78. アヴラム・デイヴィッドスン さもなくば海は牡蠣でいっぱいに
79. ライオネル・デヴィッドスン チベットの薔薇
80. クリフォード・アシュダウン シカゴの女相続人

★  会田誠 滝の絵
81. シュペルヴィエル 海に住む少女
★  マリオ・シローニ サイクリスト
82. シャモワゾー カリブ海偽典
83. 莫言 長安街のロバに乗った美女
 ジョアン・ミロ ボルタ・カタルーニャのポスター
84. ミルウォード・ケネディ 無用の殺人(湖底の自転車)
85. ケリー・リンク 妖精のハンドバッグ
 池田満寿夫 ロマンチックな風景
86. エミール・ゾラ パリ
★  エドワード・バーン=ジョーンズ??
  二冊の本のデザイン
87. イアン・マキューアン 時間のなかの子供
88. ティム・パワーズ 奇人宮の宴
89. トオマス・マン 墓地へゆく道
90. ウィリアム・トレヴァー ロマンスのダンスホール

 ダミアン・ハースト Madone
91. アラン・シリトー 土曜の夜と日曜の朝
 自転車に乗る郵便配達のウルトラマン
92. アントニオ・タブッキ 土曜日の午後
 フリーダ・カーロ 自画像とドクター・ファリルの肖像
93. フランク・オコナー ある独身男のお話
 ドゥシャン・カーライの「アリス」
94. R・C・ウィルスン 時間封鎖
95. 久生十蘭 ノンシャラン道中記
96. ジェイムズ・ジョイス 恩寵
97. バーリー・ドハティ ディア ノーバディ
98. レイモンド・カーヴァー 自転車と筋肉と煙草
 マルセル・デュシャン 自転車の車輪
99. クレア・キーガン 降伏
100.ジョナサン・キャロル 炎の眠り

( bicycles in fiction 、完)


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☆ INTERNATIONAL KLEIN BLUE

index.jpg


現代美術と青について書くとすれば、イヴ・クライン(1928-62)は欠かせない。
彼の開発した「INTERNATIONAL KLEIN BLUE」という顔料を一瓶買い求めて(税込1,680円)、わたしの靴に塗ってみた。



jil-sander-memphis-717-derby-men-shoe-spring-summer-2011-blue-sale_20120322093758.jpg



塗ってはみたのだが、もちろんこの画像のようにはならないので念の為。
クライン・ブルーの靴が欲しい方は、Jil Sanderのショップで買って下さい。




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298. チェーホフ 幸福

「幸福」(1887)、邦訳は岩波文庫版の短篇集 『子どもたち、廣野 他十篇』 に所収。
・・・羊飼いが、夜番をしている。一人は八十がらみの老人、もう一人はサーニカという若者。二人の頭上には天の川が広がっている。そんな夜の話である。朝焼けが見えてきた頃、もう一人の登場人物である騎馬見廻りの男が現れて、煙草の火を借りようと立止まり、三人の会話が始まる。

だが老人は、宝が見つかったらどうするか、返答はできなかった。生まれてこの方そんなふうにたずねられたことなど、どうやらこの朝が初めてらしかったが、浅はかで無頓着なその顔の表情からすると、それをそれほど重大なこととも、考える値打ちのあることとも思っていないようだった。(中略)
ぼんやりとまわりのぼやけた巨大な、真っ赤な太陽が昇った。まだひんやりとした、幅の広い光の帯が、露の下りた草に身を沈め、伸びをしながら、これは嫌なことではないのだと見せつけるように、嬉々としたようすで大地に横たわり始めた。銀色の蓬、野蒜の青い花、黄色い油菜、矢車菊  これらのすべてが、陽の光を自分自身のほほえみとして、いかにも嬉しそうに色とりどりに見え始めた。
(松下裕訳)


会話といっても、なんのことはない、取りとめのないはなしである。だが、ふとしたはずみで人生とか幸福とかいったところに話が行ったために、老人も、サーニカも、すこしだけ思いに耽ることになる。そしてもちろん、・・・『羊たちも同じように思いに耽っていた』のだという。
しかし彼らが思いに耽るのは、ほんのすこし束の間のことであって、彼らも、その思いも、すぐに朝の光に輝く草原のなかに羊とともに散ってゆくのだと思うのである。



☆ カフカのノート/カフカの家

①カフカの八つ折版ノート

八つ折版のノートとは、22×15㎝程度で、小学生の持つくらいの大きさだそうだ。カフカは、そこに短編や寓話やアフォリズムなどを書き留めた。


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カフカは2種のノートを使い分けた。一つは大判で俗に「大学ノート」とよばれているもので、紙型から4つ折などとよばれる。もう一つは小学生の学習帖などによく見かける小型のもので、8つ折とよばれるノートである。カフカは長篇には4つ折、短篇には8つ折をあてた。長い小説は大きなノート、短い小説は小さなノート。あきらかにカフカにはノートの大小が少なからぬ意味をもっていた。(中略)
短篇用に使われた8つ折ノートは、紙がうっすらと青味がかっている。まさに小学生がカバンに入れていたしろものである。1916年から17年にかけて、カフカはしきりに寓話風の短篇を書いた。そのかなりが1頁か2頁のもの。『審判』を中絶にしたあとであって、新しいスタイルを試みるにあたり、カフカは粗末な8つ折ノートを10冊ちかく買ってきた。最小に切りつめた散文を書くに際して最小のノートを用意した。カフカにとって文房具がモチーフと密接なつながりをもっていたことがうかがえるのだ。
(池内紀 「カフカと文房具」、2001)



このカフカの青いノートは、十冊、あったらしい。現存するのは八冊、オクスフォードのボドリアン図書館にあるそうだ。残りの二冊の内、一冊は、カフカが暖を取るために燃やしたらしい。もう一冊は、行方不明である。炎のゴブレットで燃やされたという説もある。



②カフカの青い壁の家

プラハは、カフカが生きた街である。カフカの生家、カフカの仕事場、執筆の為に借りた家、そしてお墓、なんでもある。


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王城の東のはしに風変わりな通りがある。世に称して<錬金術師通り>、さまざまに色分けされた小さな家の並びで、芝居の書き割とそっくりだ。あるいは安手のパノラマ館といったところ。四百年あまり前、変わり者の国王ルドルフ二世に招かれて、錬金術師や魔術師らが大挙してやってきた。そしてこの小路に住んで、黄金や不老長寿の霊薬づくりにいそしんだ。通りの中ほど、青っぽい壁に小さな文字板が打ちつけてある。
「かつてここにフランツ・カフカ住めり」

(池内紀「カフカの一人息子」



プラハを訪れた”私”の前に、「カフカの息子」だという男が登場し、父と母の話を語り始める。
・・・池内さんの「小説」なんて読んだことがなかった。御手並み拝見とばかりに読み出したのだが、これがすこぶる面白い。登場するゲーテやリルケやカフカのことが、あらためて好きになる。読む前よりもっと好きになること必至である。しかしこれって、池内さんのいつもの「エッセイ」とどこが違うのか?(失礼)
・・・ようく読み返してみるとおぼろげにその違いがわかってくるような気がする。さりげない形で「嘘」を織り交ぜているのだな。ちょっとした嘘を織り込んで、読む者を、虚実ないまぜになったところに誘い込んでしまっておいて、面白がっているんだな。しかしカフカの息子の話は、(池内さんのエッセイではなんども登場する話なのだが)、これだけは本当の話だったという方が楽しいのにね。
・・・「カフカの一人息子」は、短篇集『錬金術師通り』(1993)に収録の一篇。この本には、《五つの都市をめぐる短篇集》という副題が付いている。ウィーン、ブラティスラヴァ、クラクフ、プラハ、リュブリアーナ、東欧の五つの都市をめぐって物語が展開される。



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297. フェルナンド・ペソア 不穏の書

「不穏の書」は、ペソア(1888-1935)が二十年に渡って書いた”断章”をあつめた本。彼の散文詩の代表作である。作品は、ベルナルド・ソアレスと(いう異名で)署名された手記という形態を取る。邦訳は、澤田直・編訳の『不穏の書、断章』(思潮社)に抄録されている。

私は澄み渡った深い空を見上げる。ぼんやりしたバラ色のなにかが、雲の影のように、羽のはえた遠い人生の触知しがたい産毛が、浮かんでいる。目をおろすと、河には、水が静かなさざ波を立てて流れ、もっと深い空からやってくる青を反映しているかに見える。もう一度、空を見上げると、見えない空気のなかではっきりとちりぢりになってゆく曖昧な色調のあいだで、くすんだ白の痛々しい調子がすでに浮かんでいる。あたかもこれらの事物のうちになにかがあって、物がより高くより空虚であるあの高みでは、自分たちの物質的な倦怠を知っているかのように、自分自身であることが不可能であることを知っているかのように、不安と困窮でできた重さのわからない体を知っているかのように。
だからどうだというのだ。上層の空気のなかに上層の空気以外のなにがあるだろうか。空には空のものであるこの色調の他になにがあるのだろうか。・・・
(澤田直訳)


都市の孤独な散策者という体裁は、いわばマルテと同じであるが、話し手がリスボンの中年の会計士に変わるだけで、趣もずいぶん変わる。引用は、<倦怠>について書かれた断章の一部である。この倦怠は、虚無と同じか紙一重のところにあるが、なにしろリスボンである、澄み渡った深い空の下ではその虚無さえ白んでしまうかのようで、・・・だからどうだというのだと呟いてしまわざるを得ないのだろうか。

ところでペソアの詩集、「ポルトガルの海」(彩流社)は、とても美しいブルーの本である。これも、だからどうだというのではないのだが。

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