スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

350. アウグスト・モンテロッソ 不屈のニンギョ

モンテロッソ(1921-2003)は、ホンジュラス生まれのグアテマラ人。1944年に政治亡命し、以降はメキシコに住み小説を書いた。その作品の特徴は、簡潔で短い、ということ。『恐竜』(1959)は、世界一短い短編としてよく引用される。主に、人間のさまざまな面を動物に託すという形で、独特の寓話を書いた。

ユリシーズが船を止めて降りて来ました。
その顔つきは、幾多の航海を経験して、前よりももっと自信に満ちたものになっていました。
そしてニンギョの手を握ると、ひとりで歌うその声にじっと耳を傾け始めました。
しばらくそうしていたユリシーズは、それで一応の礼儀を示したつもりだったのでしょうか。
   もういいだろう。
そう、心の中で呟くと、おもむろにニンギョを抱き寄せました。
実にたくみな手つきでした。
(服部綾乃、石川隆介訳)



「不屈のニンギョ」は、第二作品集『黒い羊』(1969)に所収。モンテロッソにしては、少し長い作品である。だいたい1頁くらいはある。・・・登場するのは、ずる賢いユリシーズと、彼を待ちこがれて歌いつづけるニンギョ。美しくも哀しくもなく、それでも立派な作品として仕上がっている。”ニンギョ”譚としては、フレドリック・ブラウンの「人魚物語」(1961)と並ぶ、隠れた名作だと思う。



にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ




スポンサーサイト

349. ロベルト・ボラーニョ センシニ

ボラーニョ(1953-2003)については、先に「野生の探偵たち」(1998)について記事を書いた。この長編は、メキシコの<はらわたリアリズム>の詩人たちを描いた眼が眩むほどの快作であった。だから、今回はもっと当たりのやわらかそうな短編を選んでみたのである。

僕とセンシニが親しくなったいきさつは、どう考えても普通とはいえない。あのころ僕は二十代で、食うや食わずの生活をしていた。ジローナの郊外で、妹と義弟がメキシコに引っ越したときに残していったボロ屋に住み、バルセロナのキャンプ場での夜警の職を失ったばかりだったが、そのせいでいっそう夜型になってしまっていた。友だちはほとんどおらず、することといえば、ものを書き、外を長いこと散歩するくらいだった。出かけるのは午後七時、起きてすぐは時差ぼけのような感覚で、自分がそこにいていないような、周りの現実から浮いているような、なんとなくたよりない感じが続いた。夏の間に貯めた金で生活していたが、ほとんど使ってもいなかったのに、秋が近づくにつれて減っていた。たぶんそれでアルコイ市のスペイン文学賞に応募する気になったのだろう。
(松本健二訳)



「センシニ」は、作品集『通話』(1997)に所収。作家自身を思わせる主人公の「僕」が、スペインに亡命中のアルゼンチンの作家と出会い、二人はいろんな”地方文学賞”に応募する作品を書きながら、交流を深めていく。そんな話である。つまり、ボラーニョは、いつも詩人や作家についての物語を書き続けざるを得なかった。当たりがやわらかいなんてとんでもない、深く静かなエネルギーに満ちた作品。



にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ





348. ガルシア=マルケス 百年の孤独

ガルシア=マルケスと家族は、1961年7月2日の夕方、メキシコシティにたどりついた。手元には最後の二十ドル。ここには四人の友だちがいるだけだった。いつまでいるのかもわからぬまま、この地に住み続けることになった。雑誌や映画や広告の仕事をしながら、常に小説を書き続けた。「百年の孤独」(1967)も、このメキシコシティで生まれた。

アウレリャノ・ブエンディア大佐は三十二回も反乱を起こし、そのつど敗北した。十七人の女にそれぞれひとりずつ、計十七人の子供を産ませた   ただし、彼らは一夜のうちにつぎつぎに人手にかかって死に、いちばん長命の者でさえ三十五歳までしか生きられなかった。大佐はまた十四回の暗殺と七十三回の伏兵攻撃、一回の銃殺刑の難をまぬかれた。馬一頭を殺すのに十分なストリキニーネ入りのコーヒーを飲みながら、死ななかった。大統領から授与される勲功章も辞退した。最後には全土を支配する革命軍総司令官の地位につき、政府がもっとも恐れる人間となったが、そうなってからも写真だけは絶対に撮らせなかった。戦後に与えられることになった終身年金も断わって、マコンドの仕事場でこしらえた魚の金細工を売ってえた金で老後を送った。
(鼓直訳)



「百年の孤独」がベストセラーになってからも、彼はメキシコに住み続けた。そこで暮らし続ける理由は何か。移動をくり返しながらいつもメキシコに戻って来るのはなぜか。どうして、その地に根を下ろすことになったのか。作家自身にもその答えは見つかっていないという。では、もうひとつだけ質問。どうしてあなたの小説の中には、メキシコが出てこないのか?



にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ



347. ハリエット・ドウア イバーラの石 

ハリエット・ドウア(1910-2002)は、アメリカの作家。結婚後、何度もメキシコを訪れ、通算15年間、メキシコに住む。夫の死後、アメリカで大学に戻り、ヨーロッパ史の学位を取得。そのかたわら創作を学ぶ。第一長編の「イバーラの石」(1984)は、彼女の74歳の作品である。引用は、その冒頭の部分。

やはりここまで来てしまった。北アメリカの人間が二人、四十を過ぎたばかりの男とその年齢にわずかに届かない女が、人生の残りをメキシコで送ろうとやって来たのに、中央高原の広野で早くも道に迷っていた。ステーションワゴンを運転しているリチャード・エヴァートンは碧い目と黒い髪の頑固そうな男だが、この時本人が想像していたより三十年早くこの世を去っていく。かたわらの座席には妻のサラがいた。こちらは、差し迫ったものであれ、遠い先のものであれ、夫や自分の死など考えてはいなかった。心に描くのは今夜泊まるつもりの日干し煉瓦(アドービ)の家の、昔の姿である。その家は標高二千四百メートルの山腹、住民わずか千人のさびれた村、イバーラのはずれにあった。家は日没より一時間早く山の影でおおわれるが、その山腹を穿って縦横に坑道が通じている。五十年前、1910年の革命のさなかに、リチャードの祖父が手放した銅山である。
(三浦彊子訳)



なんてみごとな”書き出し”なんだ。不足がなく、余すところもない。物語は、まったくこのとおりの設定で展開されるのである。
   主人公の女性サラは、ドウアの分身である。作家自身のメキシコ経験が下敷きになった作品は、しかし、単純な自伝でも私小説でもなく、見事な物語を紡いでいく。・・・サラとリチャードの話が縦軸となって語られていく合間に、イバーラの村に住む人々のエピソードが幾つも挟みこまれていくのであるが、これがまさにマジックリアリズムに似た不思議な調子のメキシコ物語に仕上がっていて、読んでいて思わず頬が弛んでしまう。なんてこの語り手(サラ?ハリエット?)は、見事な嘘をつくんだと!



にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ





☆ ラ・クカラーチャ

ラクカラーチャ
Rolando Villazón -La Cucaracha.(YouTube)


ラ・クカラーチャというのは古くからあるメキシコ民謡で、歌詞もいろんなバリエーションがあるらしい。メキシコ革命の当時に唄われた歌詞には、<<もう歩けないよ、これ以上/だって後ろ足が取れちゃった。/ラ・クカラーチャ ラ・クカラーチャ>> とか、<<もう歩けないよ、これ以上/だってマリファナが切れちゃった。/ラ・クカラーチャ ラ・クカラーチャ>> とか、シュールなものもあるらしい。そりゃあ革命軍たって中身は山賊たちの夜宴だもの、歌詞なんて思いついたまま唄いまくるだけ。

だから兵士の意気を高めるとか、窮地を笑い飛ばすとか、そんな特別な意味もなくてただテンポよく酔っ払いながら唄い散らす、そんな感じか。念の為、ラ・ク カラーチャというのはコックローチの意味で、兵士を例えたとか、兵士について回る家族が鍋釜を背負いながら歩く姿を見立てたとか、革命軍の女兵士の綽名だ とか、これにもいろんな由来があるらしい。



にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ



346. 手塚治虫 夜よさよなら

「夜よさよなら」(1985)、手塚治虫漫画全集第325巻に所収、
初出は少年マガジン85年7月31日号。
主人公はメキシコ生まれの少年・岡崎タブロ。馬に乗って遠出の途中、誤って崖下に落ちてしまう。倒れているタブロに、誰かが声をかけてくるのだが・・・。


CIMG0046.jpg


ぼくの名は 岡崎タブロ 変な名だろ
インディオ語で なんとかいう意味なんだ
そう・・・・・・ぼくは 日本人の二世
十五年前ぼくの父が メキシコへ来て 
インディオ女性と結婚してぼくを生んだ



声をかけてきたのはサボテン(の精霊?)である。
励まし、水を与え、タブロを助けようとする。夜にだけ話しかけてくれる彼女のことを、タブロは「ノーチェス」と名付けて、物語が始まっていく。・・・植物が登場する幻想譚は数多くあるが、これも優しくてロマンチックで哀しくてなかなか読ませるのである。おまけに手塚治虫の”絵”が付いている。でも贅沢を言えば、手塚さんの絵って、ファンタジーというより、SF向きなんだよね。と思うのはわたしだけだろうか。



にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ





345. 平岩弓枝 小判商人(御宿かわせみ)

「小判商人」(2004)は、御宿かわせみシリーズの一作。通算、第255作。単行本、第33巻に収録。シリーズは現在、明治維新篇に突入しているが、本作の舞台はまだ幕末の頃、日米通商条約締結後に起こった”通貨戦争”を背景にして物語を展開している。

その日、神林麻太郎と畝源太郎が、金春屋敷に近い出雲町にある高山仙蔵の家へ出かけて行ったのは、仙蔵と取り決めてある日であったからである。
月の中、五の日と拾の日が、高山仙蔵の言えへ通うことになっている。二人の少年にとって、この家での学習は楽しみの一つだった。(中略)
小半刻もした時分、仙蔵は帰ってきた。
「やあ、待たせてすまなかった」
出迎えた二人に詫びて、羽織を脱ぎながら居間へ入るのを見て、麻太郎と源太郎は井戸端へ手を洗いに行った。
戻って来ると、仙蔵は懐中から布袋を出し、その中から銀色に光る貨幣を掌に取った。
それには、二人とも、見覚えがあった。
「先生、洋銀ですね」
 なんとなくなつかしい気がして麻太郎がいい、仙蔵は、
「見た所、メキシコ・ドルラル」のようだがね」
 掌にのせた洋銀を二人の前に突き出すようにした。



この幕末のメキシコ・ドルラルをめぐる事件については、他にも幾つかの時代小説で取り上げ
られている。当時としては、それだけ大きな問題だったのだろう。御宿かわせみでも、先に、第
225作「メキシコ銀貨」という作品があり、本作はその続編といってもよい内容になっている。
・・・”市井”の側から見ると、通貨戦争というのもこんな姿をしていたということだろうか。それ
よりも、麻太郎と源太郎の少年探偵姿が微笑ましいと、かわせみファンならそう読むべきか。



にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ




☆ MEXICAN LEGO

LEGO.jpg



LEGOのミニ・フィギュアシリーズ、わたしは大ファンである。
もちろん、メキシコ・シリーズも蒐集中である。
左がマラカス奏者(Maraca Man)、右がプロレスラー(luchador)。
次に欲しいのは、盗賊の兄弟(Bandito Brothers)。あとルチャドールの手にも何か持たせてやりたい。兇器かなんか。




にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ



☆ エンマスカラード (マスクマン)

P1210549.jpg


メキシコのルチャドールは約5000人。その内、約半数がマスクマンだという。古代メキシコ文明の神々たちへの仮面信仰がその起源だという説があるらしい。
ともかく、わたしもミル・マスカラス(千の顔を持つ男)にはシビレました。70年代後半から80年代にかけて、日本のマットで見せてくれたドス・カラスとの兄弟コンビでのタッグマッチのみごとさときたら!



にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ




344. フランシスコ・ヒメネス あの空の下で


ヒメネスは1943年メキシコ生まれ。4歳で家族とともにアメリカに移民、後にアメリカ国籍を取得。「あの空の下で」(2001)は、自身の少年時代を描いた物語の第二作である。第一作の「この道の向こうに」では、まだ小さな少年だったフランキーは、本作では高校に入学し、新たな生活が始まる。・・・前作と合わせて、みごとな少年小説に仕上がっていると思う。

クラスメートの大半はぼくがメキシコ人だということを知っていたし、そうじゃない人たちも、ぼくが「ジュニア・スキャンダル」に参加したことをきっかけに知ることになった。ジュニア・スキャンダルというのは、三年生の主催でおこなう年に一度の行事だ。ケロッグ先生のクラスでとなりにすわっている三年の学年委員長のマービン・ベルが、ぼくにも協力してくれないかといってきた。「なあフランキー、ジュニア・スキャンダルに協力してほしいんだけどなあ」ならんで教室に入りながら、マービンは熱心にそういった。(中略)
日曜の夜になっても、まだいいアイデアは浮かばなかった。ぼくはロベルト兄さんに相談してみた。(中略)
「メキシコの歌をうたえばいいじゃないか」
「ぼくも同じことを考えてたんだ。なにがいいと思う?」
「『シェリト・リンド』だな。おまえも大好きだったろ」
(千葉茂樹訳)


「シェリト・リンド」は、メキシコを代表する音楽である。国外でメキシコ人が集まると早速この歌が始まる。そんな歌だという。ワールドカップ等のスポーツイベントの際にも、応援曲として歌われる。♪ア~イ ア~イ アイアーイ♪というコーラスの部分は、日本でも覚えている人が多いかもしれない。ただし、メキシコ人も、”出だし”とこのコーラスの部分だけしか歌詞を知らないという人が多いらしい。歌ってそういうもんだよね。それだけで充分うたえるし楽しめる。



にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ





被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
04  12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。