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919. たけくらべ (Studies in Green)


たけくらべ


河出書房/池澤夏樹編の全集企画が、今度は日本文学全集となって始まった。
第一回配本が池澤訳の古事記、第二回が中上健二、
第三回が一葉/漱石/鴎外で、一葉は川上未映子訳の「たけくらべ」である。
既刊分とこれらに続く刊行予定を含めて、なかなかのラインアップではないかと、率直に思う。
今、文学全集を編むという意味が、ようくわかる編集になっていると思うのである。

龍華寺の信如が修行のために家をでるという噂を、美登利は聞かないままだった。信如にたいする頑なな気持ちをそのまま胸に抱いたまま、近ごろの自分がなんだか本当の自分でないように思えて、そしてそんな自分が自分でよくわからなくなって、すべてにたいしてどうふるまってよいのかわからないような気持ちで過していたけれど、ある霜の降りた朝のこと、水仙の作り花を、格子門の外から指して入れていった人がいた。
(樋口一葉「たけくらべ」、川上未映子訳)


読み返してみて思ったことは、これが美登利の物語でも信如の物語でもなくて、美登利や信如や正太や登場するみんなに焦点の当たった群像劇なんだなということで、そこがいちばんの面白さだと思うのである。それと比べると川上訳については、ああそういえば新訳だったんだなと思う程度。「たけくらべ」ときたら、いい訳かどうかだなんてそんなことにまったく関係なく、傑作なんだからなあ。



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918. HIGHLIGHTER INK & PEN (Studies in Green)


IMG_1076 (3)


   知人が土産にくれたもの。
   日本式ならマーカー・ペンというやつ。
   なによりも緑色で、且つ、万年筆型であるところが良い。
   黄色もあるというのだが、もちろんこちらが良い。
   この緑の美しいこと!
   仕事も捗るってものである。



  越してきて見るのは緑の夢ばかり 覚めたあとでもみどりいろのゆめ   (雀來豆)





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917. トマス・ゲインズパラ/美術館の緑、その❸ (Studies in Green)


Thomas Gainsborough Die Marsham-Kinder, 1787
(トマス・ゲインズパラ 「マーシャムの子どもたち」(1787)、ベルリン・絵画館)



美術館の緑 ❸ ベルリン絵画館

ベルリンの絵画館(Gemäldegalerie)は、13世紀から18世紀のヨーロッパ絵画をコレクションの核としている。デューラー、ヤン・ファン・エイク、フラ・アンジェリコ、コレッジョ、ラファエロ、ティツィアーノ、カラヴァッジオ、ピーテル・デ・ホーホ、ルーベンス、フェルメールら、巨匠たちの作品が揃っている。
しかし、わたしにとってこの美術館は、なんといっても "クラナハ" の美術館である。『若返りの泉』(1546)、『ヴィーナスと蜂蜜泥棒のクピド』(1537)、『ヴィーナスとアモール(クピド)』(1530頃) などの作品が集められた部屋になら、一日中、閉じこめられてみたいものである。

ところがクラナハの作品では"綠"は、大きな位置付けを与えられていない。
代りに画像をあげてみたのは、トマス・ゲインズパラ(1727-1788)の「マーシャムの子どもたち」(1787)という絵である。
肖像画であるが、背景の緑(風景)の描写に力が入っていること!
同じ画家の、別の作品を見ると、彼の特異な視点がもっと分りやすいかもしれない。


Thomas Gainsboroughアンドルーズ夫妻像 1748-49頃 ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
(「アンドルーズ夫妻の肖像」1748-49頃、ナショナル・ギャラリー(ロンドン))


この人物たちはなぜこんなにも左端に寄ってしまっているのか?!
つまり、ゲインズパラは、肖像画を引き受けて報酬を得ながら、実際には自分が極めたいと考えていた風景画を描いていた、というわけなのだろう。
それにしても、この絵の緑のやわらかくて美しいこと!



☆ 美術館の緑 
国立西洋美術館 (№913)
❷ベルリン、新博物館



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916. The Berliner 'Green Head'/美術館の緑、その❷ (Studies in Green)


The Berliner Green Head


美術館の緑 ❷ ベルリン新博物館の緑

ベルリン新博物館は、博物館島の中にある。
一旦、この島に入るとすぐに囚われの身になって自分の意志で出ていくことができない。
もちろん、島内の五つのミュージアムをうろうろとしているだけで時間が経ち、楽しすぎていつまでも出ていく気にならないからである。そして、"綠" もふんだんにある。

画像をあげたのは、新博物館の古代エジプト・コレクションの一つ、
通称  「The Berliner 'Green Head'」 である。
紀元前350年頃(後期第30王朝)の彫刻である。
(高さ21.5㎝、硬砂岩)
そう大きなサイズではないが、圧倒的な迫力であたりを睥睨している。
光線の加減で、なぜか綠色に見えたり見えなかったり、
金色に輝いて見えたりするのも妖しき魅力である。


☆ 美術館の緑 ❶  国立西洋美術館 (№913)



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915. Paris Green (Studies in Green)


Shamrock Tea  Shamrock Tea2


「Paris Green」とは、エメラルドグリーンとも呼ばれる。
鮮やかな緑色をしたヒ素系顔料のことを指すのだという。
セントヘレナ島に流されたナポレオンが、この顔料を塗りこめられた寝室の壁紙が発散する毒気にあたって死んだという話が残っているそうだ。    そんなエピソードを紹介しながら、キアラン・カーソンの 『シャムロック・ティ―』(2001) という物語は始まっていく。

1434年7月20日、フランドルはブリュージュの町の大鐘楼が三時課の鐘を鳴らしたと同時に、広場の雨水溝の鉄格子を開けて、緑色の肌をした男の子と女の子があらわれたんだと。 
(栩木伸明訳)


引用したのは『シャムロック・ティ―』のひとつめのエピソードである「ヒ素系鮮綠」という章の一部である。
小説全体は、こうした短い100余のエピソードを積み重ねる形で構成されている。そして、それらのエピソードはどれも"色"をテーマにしているのである。    例えば緑は嫉妬の色である。或は希望の色である。さらに愛と多産の色である。よそ者の色である。地底人の色である。そして、或る日この世界にやつてくる子どもたちの色でもあるのだそうだ。



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757. フルーテッド・ガールズ (ぼくらの本が歌う時)


第六ポンプ  第六ポンプ、2


パオロ・バチガルピの短編 「フルーテッド・ガールズ」(2003)、
短編集 『第六ポンプ、その他の短編』 (2008、ローカス賞受賞) に所収の一篇。
感想は、もう、すばらしいの一言で、バチオガルピは短篇もすごいんだなあ!と開いた口が塞がらなかったかもしれない。
ちなみに作品のタイトルは、(楽器の)”フルート化された少女たち”の意味である。念のため。

 フルーテッド・ガールズが中央のステージに立っても、最初はだれも見ていなかった。たんに風変わりな存在だった。白い肌の天使が抱きあっているだけ。(中略)
 演奏開始。まずリディアの体が鳴りはじめる。開放音が全身の開いた鍵から流れ出す。続いてニアの体を鳴らす。二人の体に吹きこまれる息がもの悲しい音を響かせる。
(中原尚哉訳)


物語は、楽器として生体改造され、秘密のパーティでステージに立たされる姉妹のはなし。
といっても、単なるワンアイデア・ストーリーではない。
導入部、展開部、そして結末に至るまで、魅力と驚きにみちている。
特に、この結末には感嘆した。
いやちょっと自分なりに陳腐なラストシーンをイメージしていたものだから余計に。



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914. ケストナー・ミュージアム (Studies in Green)


ケストナーミュージアム


ケストナー・ミュージアムは、ドレスデンのアントン・ストリートにひっそりと居を構えている。
建物は、ケストナーの叔父さんが住んでいた家を基にしたもので、ケストナー自身も小さい頃この家でよく遊んだらしい。そしてこのアントンという通りの名は、『点子ちゃんとアントン(Pünktchen und Anton)』(1931)という作品で、少年の名前として登場することになる。

このミュージアムには、写真・手紙・公的資料・演劇のプログラム等、ケストナーの生涯と作品に関する様々な手がかりが収められています。これらの資料は、テーマ別に色分けされた引き出しや扉の中に入っており、お好きな順番でご自由にお手にとってご覧頂けます。

● 緑 "ケストナー、ザクセン州出身のドイツ人" : ドレスデンでの幼年時代から、執筆活動を開始したライプツィヒ時代までの資料が入っています。

● 赤 "ケストナー、意に反しての孤立者" : モラリスト(道徳主義者)であり、時事的社会批判作品を数多く書いたケストナー。社会の中での彼の地位とはどのようなものだったのでしょう。ケストナーは社会的価値の代弁者でしたが、アウトサイダー(孤立したもの)として見なされることは決して望んでいませんでした。 とはいえ、彼は≪他のもの≫(社会全体、または単純に他人)を、度々≪敵対者≫として表現しています。これは、とりわけ第三帝国時代の思想弾圧を思い浮かべることが出来ますが、彼の場合は女性との関係にも当てはめることが出来るようです。

● 黄 "ケストナーの理想郷 -子どもの世界へ再び-" : 子どもたち、彼らはケストナーの作品の中で常に好意的な対象でした。ここには、『少しでも良い子になろう』『わずかな瞬間でも童心に帰ろう』というモラリストとしての想いが詰まった、彼の児童文学作品、映画、演劇に関する資料が入っています。

● 青 "ケストナーとメディア" : ケストナーは、作家だけでなくジャーナリスト、評論家、脚本家、詩人、そしてエッセイストでもありました。このテーマでは、クラシックなメディアである映画、舞台、キャバレーの他に、出版物やラジオ等のメディアをも巧みに利用した、彼の現代性に焦点を当てています。

ミュージアムを構成している13本のモジュール(引き出し、扉付きの柱)は、上述の4つのテーマ体系よるもので、ケストナーの世界を創造的に発見する為の手助けとなってくれます。また、13本の柱に囲まれた本体には、マルチメディア機器と共に貴重な初版本や遺品が収められています。

( http://www.erich-kaestner-museum.de/museum/neues/ )


そしてもちろんわたしは、ワクワクしながら、
"緑の抽斗" を開けたのでした。



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