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920. ジョン・ウィリアムズ ストーナー (Studies in Green)


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ジョン・ウィリアムズの長篇 「ストーナー」(1965)、
邦訳は東江一紀訳(作品社、2014)、第一回日本翻訳大賞の読者賞を受賞。
ジョン・ウィリアムズは、静かな小説を書いた。美しい物語ではなく、美しい小説を書いた。1965年に書かれた小説は、静けさとともにようやく50年後の日本に到着し、美しい小説は美しい小説のまま生き続けるということを鮮やかに見せてくれた。   とこんなふうに書いてしまうと、少し違う。美しい小説を書いたというより、これはかなしみについて書かれた小説である。しかし、かなしみについて書かれた小説はだいたいどれも美しくはないか、というふうに切り返されると困るので書き添えておくと、これはかなしみについて書かれたとびきりに美しい小説なのである。

 その年の春に六歳の誕生日を迎えていたグレースは、秋に一年生として学校へ通い始めた。ストーナーは毎朝、登校のしたくをさせ、午後には、下校に間に合うよう大学から戻ってきた。
 六歳のグレースは、背が高く、ほっそりした子どもで、髪は赤よりブロンドの色合いが強く、肌は真っ白、瞳はすみれ色に近い青だった。もの静かで明るく、父親が郷愁めいた敬意をいだくような物事に喜びを見出した。(中略)
グレースは黄色い用箋につたなく魅力的な絵を描いて、すまし顔でそれを父親に献上したり、一年生の教科書の文を父親に読み聞かせたりした。(中略)
 クリスマスの朝には贈り物を交換した。グレースは大学付属の建前だけが進歩的な学校で作った粗雑な灰皿を、煙草を吸わない父親に贈った。ストーナーのほうは、市街の店でみずから選んだ新しいワンピースと、何冊かの本、絵の具のセットを贈った。その日のほとんどを、ふたりは小さなツリーの前に坐って過ごし、おしゃべりをしたり、灯りを反射する飾り物や、深緑の樅の葉陰で埋み火のように明滅するスパンコールを眺めたりした。
(東江一紀訳)


赤よりブロンドの色合いが強い髪、真っ白な肌、すみれ色に近い青の瞳、黄色い用箋、絵の具のセット、深緑の樅の葉陰、・・・・・・このゆたかな色に彩られた時間は、ストーナーの、無彩色の時期が長い人生のなかでは、貴重な時であった。もちろん、それがわかるのは、ずっと後からなのであるが。



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