スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

933. トレヴェニアン パールストリートのクレイジー女たち (Studies in Green)


Trevanian.jpg  Trevanian2.jpg


932に次いで、聖パトリックデイのはなしである。
ここには、レプラコーンは登場しないが、緑色のソーダと緑色のケーキが登場する!
物語の舞台は、1930年代のアメリカ。
今、ニューヨーク州のちいさな町に、少年の一家が引っ越してきたところ。

 裏側のホールの手摺りから頭をつきだしてアン=マリーが見守るなか、僕は地下へ続く薄暗い階段を、そろそろとおりて行った。じっとりとした、気味の悪い冷気が下からのぼってくる。妹が見ているのだから、しっかりいちばん下までおりて、地下室のドアを少しあけ、なかをのぞかないわけにはいかない。けれど、そのとき何かが聞こえた   あるいは聞こえた気がした   。僕はわざとおそろしげな声をあげて階段を駆け戻った。アン=マリーをこわがらせようとしているのであって、自分がこわがっているわけではないかのように。そういうことをしながら、でも僕たちは何度も台所に戻った。緑色のクレープ紙でつくった輪飾りがたれさがり、聖パトリックデイの紙皿やナプキンがならび、緑色のソーダまである、パーティの用意がされた台所に。僕たちは、緑色のケーキを買って帰ってくる父親の気配に耳をそばだてていた。緑色のケーキ!
(江國香織訳)


「パールストリートのクレイジー女たち」(2005)は、トレヴェニアン(1931-2005)の最後の長篇小説だという。
アイガー・サンクション(1972) 、夢果つる街(1976) 、シブミ(1979)、バスク、真夏の死(1983)と、新作が出るつど僕らを驚かせてきた作家のこと。最後の作品には、どんな新しい趣向が盛り込まれているのか。大いに期待して読んだのである。
    読んでみると、これは、とてもオーソドックスな少年小説なのだった。
この低い音域のリフばかりが続くような小説の味わい深さを、支持する読者はどれくらいいるだろうか。



にほんブログ村 本ブログへ



スポンサーサイト

932. Leprechaun (Studies in Green)


Leprechaun.gif
(Harry Potter Wiki 「Leprechaun」)


レプラコーン は、アイルランドの伝承に登場する妖精である。
御覧のような緑の服が特徴である。そういえば、サッカーのアイルランドチームも緑のユニフォームだ。
アイルランドへ行けばみんなが緑の服を着ているというわけではないのだろうが。
アメリカでは、聖パトリックの祝日は別名「緑の日」で、街中が緑づくしになる。
シカゴでは川が緑色に染められ、建物は緑色にライトアップされる・・・。

Leprechaun/レプラコーン(クローリコーン)
M.O.M.分類:XXX
生息地:アイルランド
身長最大20cm。森林に棲む。緑色をしていて、木の葉で簡単な衣服を作る。
2、3時間で消失する偽物の黄金を創れる。木の葉を食す。悪戯好き。胎生。
クィディッチのアイルランド・ナショナルチームのマスコット。
レイブンクロー寮の寮監フリットウィックはレプラコーンの血を引いている。

(Harry Potter Wiki 「 Leprechaun」 )


映画では、ハリー・ポッターにもレプラコーンは登場して、金貨を降らせた。
ところが、小説のなかに登場してくるレプラコーンがなかなか思いつかない。
    教えていただけると喜びます。



にほんブログ村 本ブログへ





931. 幻獣の書 (Studies in Green)


The Book of the Beast  タニス・リー


タニス・リーの長篇 「幻獣の書」(1989) は、緑の書/紫の書/緑の書という三部構成になっている。
緑の書には「エメラルドの瞳」という副題がつけられている。
不思議な眼の色をした女性が登場してきて、このファンタジー小説の幕開けを告げる。

「お掛けなさい」とエリーズ・デュスカレは云った。(中略)
ラウーランの盃に暗い色の酒が注がれる。
酒の香りと、そばに屈みこんだと思うと離れた女の香りを捉えた。生身の女に間違いない。
その美しさ。その不思議さ。
女は向かいの椅子に腰を下ろし、インキにも似た古い酒をおのが盃より啜った。瞳の信じ難い色も今は見て取れる。
「お楽になさいな」
「あなたの眼」と云ってしまった。自分でもとめられぬかのように。「見たこともないほど   緑色」
(浅羽莢子訳)


先にファンタジーと書いたが、モダン・ホラーと書いたほうがよかったかもしれない。
あるいはダーク・ファンタジーか。
「美しくも禍々しい物語」という出版社が付けた惹句もまんざら遠くはないと思わせるような幻想譚が展開されて行く。
しかしまあ、タニス・リーの、ロマンス小説のようなぬけぬけとした語り口!
浅羽さんの訳文も冴える。林由紀子さんの絵も、とびきりである。
一読すれば、癖になってしまうような作品かもしれない。ということで、シリーズ作品が別に四冊ある。
怪異譚が好きな方にもぜひ。


☆タニス・リー、2015年5月24日逝去。合掌。



にほんブログ村 本ブログへ





930. 緑青/月夜のでんしんばしら (Studies in Green)


宮沢賢治漫画館第1巻「月夜のでんしんばしら/スズキ・コージ」
(スズキ・コージ、「月夜のでんしんばしら」 宮沢賢治漫画館第1巻)


「面白い試しがない」とは、大工の留さん。"小さい頃のはなし"、ってやつである。
その、小さい頃のはなしであるが、初めて身近な存在として『毒』というものを知ったのは、「緑青(ろくしょう)」という言葉を耳にしたときだったかもしれない。銅の表面にできる錆のことで、昔は、猛毒と言われていた「緑青」のことである。

うしろのはしらはもどかしそうに叫さけびました。
「はやくあるけ、あるけ。きさまらのうち、どっちかが参っても一万五千人みんな責任があるんだぞ。あるけったら。」
 二人はしかたなくよろよろあるきだし、つぎからつぎとはしらがどんどんやって来ます。
「ドッテテドッテテ、ドッテテド
 やりをかざれるとたん帽ぼう
 すねははしらのごとくなり。
 ドッテテドッテテ、ドッテテド
 肩にかけたるエボレット
 重きつとめをしめすなり。」
 二人の影かげももうずうっと遠くの緑青いろの林の方へ行ってしまい、月がうろこ雲からぱっと出て、あたりはにわかに明るくなりました。
 でんしんばしらはもうみんな、非常なご機嫌です。恭一の前に来ると、わざと肩をそびやかしたり、横めでわらったりして過ぎるのでした。
(月夜のでんしんばしら)


宮沢賢治の作品には、この「緑青」が、たびたび登場する。
ここでは、大好きなでんしんばしらの物語を引用した。

ところで、この話には、賢治自身が描いたとびきりの挿絵が存在する。
そんなものを差し置いて、新たに挿画を描けるのは、スズキ・コージくらいだと思ったりするのである。



にほんブログ村 本ブログへ


929. 建築と植物/シアトル中央図書館 (Studies in Green)


Seattle Public Library
(シアトル中央図書館・新館、2004)


『建築と植物』、というのが刺激的なテーマだった時代は終わったのだろうか。
藤森照信さんの 「タンポポハウス」(1995) や、パトリック・ブランの 「緑の壁」(マドリッド2007、他) や、ベネチア・ビエンナーレの日本館の 「温室」(2008) を見たときのような驚きは、とうに過去のものになってしまい、今や、あちらこちらにあふれている壁面緑化や屋上庭園を見ても、感じるものが皆無というかなしい気分であったりする。



tor3037.jpg


思えば、シアトル中央図書館で "植物柄のカーペット" を見たときに、建築と植物の幸せな出会いの時代は終わりつつあるのだと気がつけばよかったのかもしれない。迂闊な眼が、それに気がつくためには、10年後に某ニトリで大量のボタニカル柄の敷物を目にするときを待たねばならなかったのである。




にほんブログ村 本ブログへ










1003. 新聞少年の名誉 ( bicycles in fiction Ⅱ)


Kurt Vonnegut


カート・ヴォネガットの「新聞少年の名誉」、1950年代に書かれた短篇である。
作家の没後に出版された未発表小説集 『Look at the Birdie』(2009)に所収。
作品集の邦訳のタイトルは、『はい、チーズ』(河出書房)、である。
    しかし、 新聞配達と少年と自転車 という三者の蜜月のような関係は、いつから崩れてしまったのだろうか。

 そのとき、サタンが吠えている相手の姿が見えた。自転車に乗った少年の脇を、肉切り包丁のような歯をむきだしにしたサタンが走っている。吠えながら頭を左右に振り、おそろしい牙で空気を切り裂く。
 少年はまっすぐ前を見つめ、犬などいないふりをしている。チャーリーがこれまでに見た中で、いちばん勇敢な人間だ。この英雄の名は、マーク・クロスビー。十歳の新聞配達員だった。
(大森望訳)


幸いなことに、1950年代のアメリカには、まだ自転車に乗った新聞配達の少年が健在であった。
しかも、勇敢な少年、である。
ヴォネガットも彼の作品も、確かに懐かしい。
しかし、今は、それよりも、この自転車に乗った新聞配達の勇敢な少年のことが、とても懐かしく感じるのである。



にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ



被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
04  12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。