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900. ユイスマンス さかしま (画家小説百選)

ユイスマンス


「さかしま」(1884)の主人公のデ・ゼッサントは、パリを遁れ郊外に隠棲の居を構える。俗人や喧騒のみだりに侵入しない土地で、心の安らぎに浸ろうと目論んだのである。そして、買い取った家に徹底的に手を入れ、そこに人工の理想郷を作り上げようとする。

書斎は、青とオレンジ色を基調としたものである。壁は、膚理モロッコ革や山羊皮などをもって、書物のように装われた。天井には、濃い青色の絹張りの丸い天空が切りひらかれていて、その円い天空の真んなかに、昔、ケルンの織工たちが聖職者の祭服に縫い取った銀糸の熾天使が、幾つとなく羽ばたきながら舞いのぼっている。

当然ながらこの書斎は、ドン・キホーテが作り上げた騎士物語の殿堂とも、ネモ船長が有する壮大で実際的な図書室ともかけ離れた、神秘的象徴主義の所産である。書斎に並ぶのは、彼が愛する頽唐期のラテン文学であり、ボオドレエルでありマラルメであり、珍奇な宝石や香料や花々である。この書斎のなかで、デ・ゼッサントは、ひたすら感覚と趣味とを洗練させて人工的な夢幻の境に逃避しようとする。


そして、絵画である。
この部屋に必要な画家は二人だけであった。
デ・ゼッサントにとっては、ギュスターヴ・モロオとオディロン・ルドンの作品があれば十分だったのである。


GustaveMoreau.jpg

Gustave Moreau (1826-1898) 「L'Apparition」1876
(© RMN-Grand Palais (Musée d'Orsay) / Jean-Gilles Berizzi)


Redon.jpg

Odilon Redon(1840-1916) 「In the dream/Vision」1879
(©This artwork is in the public domain.)
*クリックすると、大きな画像が開きます


ユイスマンス(1848-1907)は、フランスの小説家。
内務省に勤める傍ら、小説を書いた。
初期は、エミール・ゾラに近い場所で自然主義小説を書いたが、1884年の「さかしま」では、一転して、その後"デカダンスの聖書"と称されるような神秘的で、痙攣的で、それでいて神聖で衒学的な作品を発表した。この小説は、当時、"隕石のように文芸市場に落ち、茫然自失と激怒を捲き起した"のだという。もちろん、21世紀の読者の頭上にも隕石のように落ちるのだと思う。


(画家小説百選、完)



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