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536. コルフ島、伯爵夫人のスープ (Today's Soup)

ダレル、Birds, Beasts, and Relatives1969  ダレル、長新太


ジェラルド・ダレル(1925-95)の二冊の本、「虫とけものと家族たち」(1956)と、「鳥とけものと親類たち」(1969)は、いつもそばにおいてふらっと読みかえしてみたい本ランキングがあれば、きっと上位を占めるに違いない。彼が家族とともにギリシァのコルフ島で過した子ども時代のことを書いた本なのであるが、読めばとにかく楽しくなる。どのくらいたのしいかというと、この本の訳者が家族を引き連れてギリシアに移住してしまったというエピソードを添えておけばいいだろうか。

伯爵夫人はぼくの手を取ってタイル敷きの廊下を通り、きしむ木の階段を降りて、地下にある宏大な台所に連れていった。(中略)床の真中には長さ四メートルほどのよく磨いたきれいなクルミ材の大テーブルがあった。その上には二人分のナプキンとナイフ、フォークの類がきちんとならべてある。テーブルの真中に森のようにたくさん白い蝋燭をたてた巨大な銀の燭台が二つ立っていた。そんな豪華な食卓が台所にあるのは奇妙なながめだった。(中略)
最初にディミートリオス=ムスターファが出してきたのは澄んだみごとなスープで、黄金色の油が小さな金貨のように表面に散り、爪くらいの大きさのクルトンが褐色の海に浮く小さなカリカリのいかだのように泳いでいた。味はすばらしく、伯爵夫人はおかわりをして、落ち葉の上を歩くような音を立ててクルトンを噛んだ。ディミートリオス=ムスターファはまたグラスにじゃこうに似た匂いの淡いぶどう酒を注ぎ、金色に揚げた小魚の大皿を運んできた。大きな皿に山もりの緑がかったレモンのうす切りと、ぼくが知らない珍しいソースが一緒についてきた。伯爵夫人はお皿に小魚をうずたかく盛りあげ、ソースを溶岩のようにたっぷりかけ、レモンをしぼって魚とテーブルと自分の服に均等にふりかけた。
(「鳥とけものと親類たち」、池沢夏樹訳)


話し手のぼく(ジェラルド)は、当時、十歳くらいの少年である。引用したのは、少年が一人だけ、引退した伯爵夫人の屋敷に招かれ食事をする場面。みごとなスープから始まるとてつもなく豪華で大量の食事、優雅なガルガンチュワかパンタグリュエルのように食べまくる伯爵夫人、はじめての経験が続くなかで圧倒されとまどう少年。   これだけで、かなしみとおかしさにあふれた結末が、わかるような気がしないだろうか。




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