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76.フラバル わたしは英国王に給仕した

「わたしは英国王に給仕した」(1971)は、河出/池澤版世界文学全集の一冊。
小説の舞台は、ナチス占領から共産主義へ移行する時代のチェコ。なのに、シュールでグロテスクなくらいの可笑しさにあふれている。フラバル自身も、共産党体制下で出版を禁じられる立場にあったにもかかわらず、どうしてこんなとんでもないほら話が書けたんだ?

「ある時のことだが、櫛を、きれいな象牙の櫛を手配するように頼まれたんだ。八百コルナもする品物だ。自転車のカゴに載せ、二つの大きな袋に入れていた」(中略)
「で、丘の上まで櫛を運んでいくと、農夫の娘が目の前を横切ったんだ。この娘もわしとおなじく自転車に乗っていて、森の中にある丘で止まっていたんだ。わしが自転車をてっぺんまで押していくと、彼女はわしのことをじっと見ていてな、あまりにも熱心に見ていたのでわしは視線を逸らしたほどだった。すると、わしにそっと触れ、こう言ったんだ。ラズベリーでも見に行きませんか、とな。わしは櫛を積んだ自転車を丘の上にそのまま置いて、彼女もわしの自転車の上に重ねるように自転車を置き、わしの手を取ると、すぐ近くにあった灌木の蔭でわしを押し倒し、ジッパーをおろしはじめたんだ。気がつくと、娘はわしの上に乗っていて、わしは混乱した。(中略)自転車のところに駆けつけると、(中略)農夫の娘が駆け寄って来てわしの自転車のペダルが彼女の自転車のネットにもつれているのを見て、これは二人が離れられないしるしね、と言うんだよ。(中略)いいかい息子よ、よくおぼえておくんだ、人生はすこしでもうまくいくと、素晴らしいものになる、とても素晴らしいものにな…」(阿部賢一 訳)

この自転車が登場するシーンも、可笑しさにみちあふれている。こんなに奇妙で美しい愛欲シーンは初めて見た。引用したのは、小説の冒頭部、主人公であるヤン・ジーチエがまだ15歳の頃、人生の師ともいうべきセールスマンの男に励まされる場面なのであるが、果たして激励になったのかどうか。




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No title

すばらしいですね!
フラバルは『あまりにも騒がしい孤独』しか読んでいなかったのですが、
とても読みたくなりました。

おはようございます

『あまりにも騒がしい孤独』も、読もうと思っていたところでした。故紙の中からときおり美しい本がみつかる、もうその設定だけで、魅せられますね。


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