568. 昼 鰹のさしみ 粥三椀 みそ汁 佃煮 梨二つ (Today's Soup)

正岡子規 仰臥漫録


或る日、とある雑誌をながめていたら、『読み物としての「日記」』という特集記事が載っていた。
それで、毎日の食事について尋常でない気魄で書き続けた作家の日記のことを思い出したのである。

九月四日 朝曇 後晴
昨夜はよく眠る
新聞『日本』『二六』『京華』『大阪毎日』を読む例の如し 『海南新聞』は前日の分翌日の夕刻に届くを例とす。
朝 雑炊三椀 佃煮 梅干
   牛乳一合 (ココア入) 菓子パン二個
昼 鰹のさしみ 粥三椀 みそ汁 佃煮 梨二つ
   葡萄酒一杯 (これは食事の例なり 前日日記にぬかす)
間食 芋坂団子を買来らしむ(これに付悶着あり)
あん付三本焼一本を食ふ 麦湯一杯
   塩煎餅三枚 茶一椀
晩 粥三椀 なまり節 キャベツのひたし物
   梨一つ
午前種竹山人来る 菖蒲田原釜なこそなどの海水浴に遊んで帰ると 原釜にては松魚一尾八銭高きとき十三銭
家庭の快楽といふこといくらいふても分らず
   物思ふ窓にぶらりと糸瓜(へちま)哉
肋骨の贈り来りし美人画は羅(うすもの)に肉の透きたる処にて裸体画の如し
   裸体画の鏡に映る朝の秋
   美女立てり秋海棠の如きかな

(正岡子規「仰臥漫録」、明治34年の日記、岩波文庫)



明治34年(1901)、35歳の子規は病床にあった。病床で起こされた日記は、臥せることができない
ので、「仰臥漫録」という題名どおり仰向けのまま毛筆で記されたものだという。そして、日記の内
容はといえば、天候、見舞客の応対、三度の食事と間食、服薬と治療、睡眠、便通等の単調な日
課を繰り返すだけの様子が綴られている。しかし、

しかし、「最後の病床にあって彼はなお巨人である。」 (阿部昭、岩波文庫・解説)
単調で瑣末な日課の繰り返しでしかないはずのものを、尋常でない気魄と、仮借のない洞察力で
書き綴り続けた作家の強健な精神にはただ感嘆するばかりである。



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