スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

569. アン・ビーティ、おいしそうなのに食べたくならないスープ (Today's Soup)

THE NEW YORKER STORIES2


アン・ビーティは、よく料理や食事の場面を描く。
しかし読むたびにそれが何かもどかしく感じるのである。

そのもどかしさの理由を看破してくれたのはとある書評家だった。
書評家の倉本さおりさんによれば、アン・ビーティを物語る3つのポイントは次のとおりだという。
①女性同士、とくに母娘の関係
②おいしそうなのに食べたくならない料理の数々
③犬の小説


ディナーはうまくできそうだ。デイルは、リーキとサルシフィをピューレにして、フードプロセッサーのカボチャに加えた   スウィートベルモットを大さじ一杯ほど加えると、味が引き締まるかもしれない。畑の上の灰色がかった青い空にピンクの筋が浮かんでいた。彼女はCDをプレイヤーに入れ、ルー・リードが 「俺はこの世界の女たちへの贈りものさ」 と淡々と歌うのを淡々と聞いた。
(中略)
 「みごとだ。みごとなスープだ」とジェロームが言った。 「いつになったらレストランの開業資金を提供させてもらえるのかね?」
 何年も前から、ジェロームはデイルにニューヨークでレストランを開かせたがっていた。(中略)
「写真のほうはどうだね?」 デイルがなにも言わずにいると、ジェロームが言った。ブレンダはまだ下を向いてスープを食べていた。
 「今、ちょっと興味深い作品に取り組んでいるんです」 とデイルは言った。 「この先に住んでいる女性が・・・・・」 彼女は暗いほうを身ぶりで示した。見えるのは、ポーツマスに渡る橋の光だけで、遠くで小さく点滅していた。 「ここに一年中住んでいる女性がひとりいて   薪ストーブで暖房しているんです   彼女の写真を撮っているんですが・・・・・いつもながらばかげて聞こえますね、なにを撮っているかを言葉にすると。まるで言葉で言い換えるみたい」とデイルは言って、ネルソンの同情を引こうとした。
 「大枠だけでいい」 とジェロームは言った。
「彼女は依頼に応じて占星図を描いているんです。本当に美しい図です。それに、彼女の手がまたすばらしい。ジョージア・オキーフを思わせる手です。彼女が硫酸紙に印をつけているときの手を撮影しました。手はその人について多くを語ります。手を変えることはできませんからね」
デイルは話せば話すほど、ばかげた気分になった。

(アン・ビーティ「この世界の女たち」,2000年、岩本正恵訳)


もどかしさの理由は、「おいしそうなのに食べたくならない料理」を見せられるような気分になるからだったのか、そう思いながらこの本を読み返していたのだが。なんと、その理由がわかったのにもどかしい気持ちはおさまらなかった。
つまり、アン・ビーティの小説に登場する女性たちの多くは、家族や友人との別れや断絶を経験し、孤独や困惑や諦めやかなしみを強くこころに抱えていて、明確なことばで自分を表現したり、男たちや世界を相手に強い態度を示せないでいる。本当はそんなところにもどかしさと共感を感じていたのかなと、そう思い直したりすることになったのである。




にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ


関連記事
スポンサーサイト

⇒comment

Secret

被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
04  12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新コメント
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。