570. 子供のころ好きだった光景 (Today's Soup)

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そういえば、そんな光景を見ていた。
かもしれない。
言われればそんな気がする。
ような気もする。
これは、ぼくらが子どもの頃に見ていた、そんな無数の光景のひとつなのだと思う。

エスカレーターをおりる直前、ステップの溝が吸い込まれる櫛目プレートのところに煙草の吸いがらが一つひっかかり、小さく撥ねながら回転しているのが目に止まった。私は中二階に降り立ち、振り返ってその吸いがらをしばらく眺めた。それは子供のころ好きだったスーパーマーケットでの光景、マヨネーズやピーナツバターやオリーブの瓶、それにオレンジジュースの缶やスープの缶が、ベルトコンベアの端にひっかかってくるくる回り、ラベルが何度も現れては消える    ヘルマンズ! ヘルマンズ! ヘルマンズ! あの光景の早回しヴァージョンだった。

(ニコルソン・ベイカー「中二階」,1988、岸本佐知子訳)


男が、ビルのエスカレーターを昇っていく。
ここから作品が始まる。
男は、昼食のついでに靴ひもを買い、同じビルの中二階にあるオフィスへ戻っていく。
ここで作品は終わる。

その間の時間に彼の頭に浮かんだ事柄が、正確にそしてやたら細かく、瑣末な部分まで語られていく。
これはそんな小説である。
しかしなぜ日常のディテールを書き連ねただけのようなこの小説がこんなにもスリリングで魅力的なのだろう! ・・・わたしの場合、ただ ”早回し” に弱いだけなのかもしれないが。



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