588. 煮込んでしまえば形もなくなる (Today’s Soup)

新井素子の 「ひとめあなたに」(1981) を読んでいる。
これは、”長編SFロマン”、と呼べばいいのだろうか?
長編でも、SFでも、ロマンでもないように感じるのは気のせいか??
物語は、一週間後、地球に大隕石が衝突する見込みで、地球も人類もすべて余命いくばくもないという設定。そんな状況の中で、女たちがどんなふうに動いていくのかを描く。
折りしも物語は、ひとりの女性がスープを作っている場面にさしかかったところ。
かちっ。ガスの火をつける。おなべに水をいれて。
赤いおなべ。ステンレスの。一年半、使ってきたけど、まだ新品同様よ。きれいにしておきたかった。一度使うたびに、自分でも神経質だと思うほど、しつこくみがいた。
コンソメ、いれるべきかしら。
少し悩む。
骨からうまくスープをとれる自身、ない。でも、この骨を捨てる訳にはいかない。
・・・いいわ。コンソメ、一つだけいれよう。それから骨と。
腕をきれいに洗う。
(第二章、「由利子 あなたの為に チャイニーズスープ」)
この引用部には、バックグラウンドミュージックというか、テーマソングのようなものが付けられている。
それは、荒井由美の 「チャイニーズスープ」(1975) という曲である。(→ YouTube、音量注意)
由利子という女性が、この曲の 『煮込んでしまえば形もなくなる』 という歌詞(フレーズ) を口ずさむところで章が閉じる。ただし、彼女が、何を煮込んでいるのかについては、あえて書かないでおこうと思う。それにしても、・・・なんて悍ましいんだ!
この辺りの描写は、気の弱い読者なら、とても正視なんてできやしない。
わたしにしても、眼を隠した指の隙間からこっそり覗き見するのがやっと。二度と読み返さないとこころに誓って本を閉じた。
でもそれ以来、気がつくと、♪煮込んでしまえば形もなくなる、と口ずさんでいたりする。・・・なんて悍ましいんだ!

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⇒comment
No title
うわー。
なんか意外なところから来ましたね。
「ひとめあなたに」
高校か中学ぐらいに一度読んだっきりのはずなのに、
あの粘度の高い雰囲気を
思い出してしまいました。
なんか意外なところから来ましたね。
「ひとめあなたに」
高校か中学ぐらいに一度読んだっきりのはずなのに、
あの粘度の高い雰囲気を
思い出してしまいました。
こんにちは
Simaさん、こんにちは
新井素子さんの本は、わたしも、"昔いちど読んだきり"、にしているものが多いですね。
新作もあるようだけど、読みたいようなそうでもないような。
でも、このスープの話は、くっきり覚えてました^^
新井素子さんの本は、わたしも、"昔いちど読んだきり"、にしているものが多いですね。
新作もあるようだけど、読みたいようなそうでもないような。
でも、このスープの話は、くっきり覚えてました^^