スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

599. 柔かい月/原初の海 (Today’s Soup)


Primordial Soup


"原初の海" は、スープに例えられてきた。
地球上の生命の起源を、この原初の海=有機物のスープにもとめる説 (「化学進化説」、または「スープ説」) は、現在も自然科学ではもっとも広く受け入れられている学説だそうだ。

幸いなことに、このブログでは、この説の真偽についても、さらに遡って生命の定義を論じることも、あるいは最新の非・スープ説を紹介することも必要ではない。ただ、小説の中で描かれている ”原初のスープ (primordial soup)” を探り出し、これを紹介するために、せいぜい数十行のエントリをまとめればいいのだからお気楽なものである。
しかし・・・、


カルヴィーノ


しかし、これが意外に難問だったのである。
幾つかSF小説をたどれば、”原初のスープ”というような大きなテーマのこと、SFの題材にぴったりで、これについてふれた作品などすぐに見つかるさ、とそんな気持ちでいたのであるが、これが大間違いだった。    ようく考えてみれば、それは当たり前のこと。”原初の海”なんて言葉のロマンチックな響きに惑わされていることに気がつけさえすればすぐにわかる。
そもそも、人間がまだ存在しない時代を背景にした小説なんてありえないのである。だって小説とは人間の物語なのであるから。そりゃあヴェルヌもウェルズもハインラインも手が出なくてもしかたがない。
となると・・・、

生命ガマダ大洋カラ発生シテイナカッタ頃ノ状態トイウモノハ、イマモ動脈の中ヲ流レ続ケル原始ノ波ニ浸サレテイル人体ノ細胞ニトッテハ、アマリ変化ハシテイナイ。事実ワレワレノ血ノ化学組成ハソノ起源タル海ノ化学組成ト類似シテイル。ソシテ最初ノ単細胞ヤ最初ノ多細胞生物ハ海カラ生命ニ不可欠ナ酸素ヤ他ノ元素ヲ得テイタノデアル。イロンナヨリ複雑ナ器官ノ進化ニトモナイ、大多数ノ細胞ガマワリノ液体トノ接触ヲ維持スルトイウ問題ハ単ニ外面ノ膨張ノミデハ解決不可能トナッタ。ソコデ中ニ海水ガ流レ込メルヨウナ凹状構造ノ器官ガ有利ニナッテイッタノデアル。シカシ酸素ノ供給ガ細胞ノ複合体全体ニ保証サレルノハコウシタ凹状構造ガ血液ノ循環しすてむヘト進展スルコトニヨッテハジメテ可能ニナッタノデアリ、ソコデハジメテ地上デノ生命ノ維持ガ出来ルヨウニナッタノデアル。カツテ生物ガソノ中ニ浸ッテイタ海ハ、今デハ彼ラノ体内ニ取リコマレテイルワケデアル。

  結局は大して変ってはいない、私は泳いでいる、同じ熱い海の中を泳ぎ続けている  クフクフクは言った  言いかえれば、内部は、つまりかつて私が陽光の下を泳いでいた、そして暗闇の中を現在泳いでいる、以前外部であったもの、そして今なお内部にあるものは、変ってはいないのだ。変ったのは外部、すなわち以前内部であったところの現在の外部だ、これはたしかに変った。

(イタロ・カルヴィーノ「柔かい月」,1967、脇功訳)


となると、頼みの綱はカルヴィーノかラファティくらいしかいない、
というのがわたしの意見である。
原始地球の原始海洋を小説の中で描ける作家なんてこの二人くらいではないか、というのは偏狭にすぎるだろうか?




にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ


関連記事
スポンサーサイト

⇒comment

Secret

被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新コメント
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。