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735. 口笛(または、クロウタドリとの対話)    (ぼくらの本が歌う時)


blackbird John James Audubon1827-38
(「blackbird」、 John James Audubon, 1827-38)


「存分に鳥の歌声の聞こえる土地で夏をすごすこと」を、パロマー氏は幸せのひとつだと思っている。
パロマー氏とは、イタロ・カルヴィーノが連作短編の中で描いた中年男である。
彼は鳥の歌声を聞くのが好きである。しかし同時に、一声聞けばそれがどの鳥の声かわかるといった類いの人間ではない。   そんな彼でもすぐそれとわかるのがクロウタドリの口笛のような声である。クロウタドリとは、ビートルズがうたった"ブラックバードのことである。見かけに似合わず、とてもきれいな声で鳴く。

 もし人間がふだんの言葉に託していることすべてを口笛に委ね、クロウタドリが、言葉にならないその習性を残らず口笛で語ったとしたら、そのときこそ、第一歩が印されるにちがいない。分離を埋めるための・・・・・・だが、何と何との分離なのだろう? 自然と文化だろうか? 沈黙と言葉? 言語で表現しうる以上の何かを沈黙がはらんでいればいいのに、とパロマー氏はいつも思う。(中略)
 クロウタドリの口笛に注意深く耳を傾けた後で、かれはできるだけ忠実にそれを繰り返してみる。かれのメッセージは念入りに調べる必要があるとでも言いたげに、あやふやな沈黙が後に続く。それから同じ口笛がこだまする。パロマー氏には、それが自分への返事なのか、それとも、似ても似つかないかれの口笛などお構いなく、何事もなかったかのようにクロウタドリが仲間同士の対話を再開した証なのかがわからない。
 口笛を鳴らし、、かれとクロウタドリのあやしげな問答はつづく。
(カルヴィーノ、「パロマー」,1983、和田忠彦訳)


なにやら、しゃちほこばった思いが綴られている。
パロマー氏は、世界に目を凝らす、観察の人なのである。
冷静で孤独で静謐な態度で外界や事物を眺め、それをていねいに言語化しようとする。
クロウタドリの口笛を聞きながら、彼は、きっと鳥たちは人間の対話も自分たちの口笛と同じものだと思っているに違いないなどと考えている。観察ばかりではなく、省察の人なのである。



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