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737. クリスマス・イーヴ 、W・アーヴィング (ぼくらの本が歌う時)


washington irving The Sketch Book of Geoffrey Crayon, Gent 1820  The Sketch Book of Geoffrey Crayon, Gent


ワシントン・アーヴィングの 『スケッチ・ブック』(1820) といえば、そこに所収されている 「リップ・ヴァン・ウィンクル」 と 「スリーピー・ホローの伝説」 がすぐに思い浮かぶが、その他の短篇や散文も粒ぞろいでとても愉しいのである。   「クリスマス・イーヴ」もそのなかの一篇である。アーヴィングの英国滞在時の作品だという。作者が、イギリスの古い荘園を訪れるところから文章は始まる。折しもこの日はクリスマス・イヴ、館では家長から使用人にいたるまで皆が加わっての宴が今やたけなわなのであった。

一座の興を引立たせた面白い變り者があつて、彼をブレイスブリッジ君はマースター・サイモンと云ふ變つた呼び名で呼びかけてゐた。彼はきちんとした服裝 をつけてきびきびした小男で、その物腰は正眞正銘の獨身老人であつた。(中略) 彼に訊けば一族の年代記はすべて判明し、ブレイスブリッジ一家全族の系譜、歴史、婚姻關係に精通してゐるので、彼は老人の間で非常に氣に入られた。彼はまた老夫人や老い朽ちた老孃達の間では伊達者で通り、普通寧ろ若い人と見做される例であつた、そして子供仲間ではクリスマス祝祭の取持役であつた。かうしたわけで、これ以上人氣のある人物はサイモン・ブレイスブリッジ氏の出沒する圈内には他にゐなかつた。近年は殆ど全く老主人の邸に寄寓して執事のやうな役を勤め、わけて家長とは昔語りで馬を合せて氣に入られ、また時時に應じて昔の唄の一くさりを吹いて喜ばれた。わたし達は間もなく、この最後に述べた藝の見本に接することが出來た、と云ふのは、食事が片附けられて、香をつけた葡萄酒とかその他季節向きの飮料が運ばれて來ると早速、マースター・サイモンに昔のク リスマスの歌を一つと所望されたのである。一寸の間考へてから、目を輝かせ、惡くない聲で――ただ時々裏聲になつて、裂けた蘆笛のやうな音をだした――古風な小唄を一曲聞かせた。

「クリスマスが來たよ、
 太鼓鳴らせうよ、
 隣近所を呼び集め、
 顏がそろたら、
 御馳走祝うて、
 風もあらしも寄せつけまいぞ…」

(高垣松雄訳)


この歌で宴が終わるわけではない。まだ真只中である。この後、老竪琴師が呼び出され、ダンスが始まり、そしてもう一度歌になる。今度の歌い手は若い士官である。ギターを手にとり小夜曲を歌いはじめる。
   これは小説ではなく文字通りスケッチのような短い文章である。しかし彼の小説と同様の味わいが十分にある。この10年後に登場するアルハンブラ物語の優美さがすでに現れていると感じるのである。



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