738. クリスマス・ソング 、H・E・ベイツ (ぼくらの本が歌う時)


ベイツ


ベイツ (1905-74) の短篇 「クリスマス・ソング」(1950)、
邦訳は同名の作品集『クリスマス・ソング』(福武文庫)に所収。
物語の舞台は二次大戦後のイギリスの田舎町、クリスマス・イヴの日、
登場するのは声楽教師のクララである。

 クララは楽器を並べた店の二階の長い部屋で声楽を教えていた。教えた生徒はいろいろな試験によく合格した。そしてそのあと土地のコンサートでたいへん評判になったり、声楽の先生として弟子をとって成功したりした。彼女自身これまでにいくつもの試験に合格していて、だれもが、彼女の歌はなんとすばらしいんだろうと感心しあったものだ。 (中略)
 去年のクリスマスに彼女はウィリアムソン家のパーティでいくつか歌を歌った。だが、ジンとポートワインをいっしょに飲んで景気よくなった男客の何人かはおよそ見当ちがいな箇所で拍手をしたし、フレディ・ウィリアムソンはこともあろうに「いいぞ、クララ」などとどなったりした。(中略)
 部屋から出て行こうとすると、妹が二階にあがってきた。
「あら、そこにいたの。いま下に若いお客さんがきていて、買いたい歌の名前が分らないと言ってるわ」
「ダニー・ケイの歌じゃないの? いつだってそうなんだから」
「そうじゃないの。その人はクリスマス・ソングだと言ってるわ」
「じゃあ、行くわ」と彼女は言った。それから階段の途中まできて立ちどまった。エフィに言おうと思っていたことを思い出したからだった。「話は変わるけど、私、今夜はパーティには行かないわ」と彼女は言った。
(大津栄一郎訳)


クララはパーティに行きたくない。時間は迫っている。慌ただしい時に、レコードを買いに来た男が、曲の名前を調べてほしいという。妹や家族は、パーティに行かなきゃダメだという。歌はなかなか見つからない。クララはやはりパーティには行きたくない。シューベルトの曲だと思うのだがはっきりしない。ウィリアムソンが迎えに来てクララを強引に連れていこうとする。クララは断る。一旦帰った客の男が来て、やはりシューベルトだと思うと言う。曲が見つかる。最初の一節を歌ってみる。ウィリアムソンが早く行こうと急かす。歌詞の続きがどうしても思い出せない。客の男がレコードを買って帰る。クララは強引に連れ出される。外に出ると霜が降りていてきらきらと光っている。ウィリアムソンがキスする。クララはどうしても歌詞の続きが思い出せない。

・・・・・・シンプルで短い物語である。古風な小説である。しかしこころの機微をみごとに描いている。短篇小説のお手本のような作品だと思ったりする。



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