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746. 女子学生 (ぼくらの本が歌う時)


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女子学生、といっても太宰の小説ではない。伊東深水の絵でもない。
マンディアルグの短篇である。
絢爛な言葉のあいだにともすると埋もれてしまいそうになる物語が、ある瞬間にぬっと立ち上がってくるのを見ることができる、そんな快感を味わえる小説である。

マリー・モールが私にあかしたところでは、その部屋の中で目にする諸情景は一人の男との出遭いといういつも変わらぬ主題でつらぬかれており、そしてそれらの出遭いはひとつ残らず実際に彼女の生活の中で、同じ場所において、まさしく同じ言葉のやりとりで、何日かあるいは何週間か後に再現するというのである。本屋でのわれわれの鉢合わせについてもそんなぐあいだった。(中略)
ときどき打ち明け話のあとで彼女が口ずさんだ短い歌のメロディー、咽喉にかかった言葉のひびきを、いまも折にふれ私は想い出す。それは家馬車の群れにかこまれた焚き火を、灰の下にうずめて焼かれたはりねずみを、長い木綿のスカートを、縮かんだ蝙蝠よりもまだ黒い耳たぶの下に垂れさがった大きな環を、私の眼前にちらつかせる。
彼女が訳してくれたところではそれはこんなふうな歌だった。

捨て児はみんな持っている
咽喉の奥に
陽気な笑いの小石の下に
青いせせらぎの叫びを
彼らの母を知っている
狂った白鳥の叫びを。

(マンディアルグ「女子学生」,1945 、生田耕作訳)


邦訳は、白水社版のマンディアルグ短篇集『狼の太陽』に所収。
粒ぞろいの作品がならぶこの短篇集のなかでも、実は、「女子学生」の後につづく最後の二篇   「断崖のオペラ」と「生首」 が圧倒的に面白いのである。
”歌”というテーマがなければ、わたしだってそちらを選んだ筈だ、というのは言い訳のようなものであるが。
   しかし、考えてみれば、「断崖のオペラ」にも、海豹と人魚が歌をかわす印象的な場面があったのである。改めて記事にしようと思う。



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