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82.シャモワゾー カリブ海偽典

「カリブ海偽典」(2002)は、約1000頁の大長編である。植民地独立戦争の戦士であった老人が、死の床の中で、自身の長い長い回想録を語り始める。〈シャモワゾー〉は、その回想を書き記すべく召喚された言葉の記録人である。そして、その記録をまとめたのがこの作品であるという設定になっている。ところが、この老戦士は言葉を発しない。自分の生涯の思い出を、すべて身ぶりによって語るのである。シャモワゾーは、その身ぶりを言葉に翻訳する役目を託されたのであるが…。

マン・ルブリエは、大声で笑い、背中を叩くことで、彼を調子はずれの時間から追いたてた。何日かのあいだは、すべてがふたたび動きはじめていた。その笑いは奇妙だった  カフカが短篇小説のなかでオドラデクと呼んでいたものの笑いにいくぶん似ていた。それは、星型の糸巻きのようなやつで、思いっきり笑うことができるが、喜びもなく、陽気さもなく、滑稽さもなく、悲惨さもなく、必然性もなく笑うのだ。(中略)
彼はそれと同じ一連の笑いを、パトリス・ルムンバの率いるコンゴ民族主義運動の活動家だったコンゴの女のうちにふたたび見出していた。(中略)会合の後で、使い古した自転車に乗り、笑い歌いながら帰ろうとしていたコンゴの女に、彼は言葉をかけた。(中略)やがて二人にとって、一緒にいることは自然なことになった。彼は彼女のかたわらをひっそりと歩き、彼女は自分の自転車の上で、さらには会合で喜びを爆発させていた。(塚本昌則訳)

それはもう奇妙な物語である。身ぶりによって表現される回想録という作品の設定からして奇妙であるのはもちろん、その回想録がほとんど彼の幼年・少年時代のものに偏していたり、女悪魔に取り憑かれた少年が救われた助言者(マン・ルブリエ)によって育てられたり、革命の理念や独立の理想よりも生涯のなかで出会った女性たちのはなしに物語の多くが向けられていたり…。しかしそんな設定に戸惑っている暇はない。なにせ1000頁の大長編の中には、みごとなほど豊かなカリブと物語の世界がぎっしり詰まっていて、これを読みほどいていかねばならないからである。ああたいへん。




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