747. ユーディット・ヘルマン 夏の家、その後 (ぼくらの本が歌う時)

ユーディット・ヘルマン2  ユーディット・ヘルマン


ユーディット・ヘルマン (1970-) の短篇 「夏の家、その後」 (1998) 、
邦訳は同名の作品集(河出書房新社)に所収。
ヘルマンは、最近のドイツ文学では珍しい短篇の名手なんだそうだ。
なるほど第一作品集にもかかわらず、ていねいに書き上げられた小説が美しく並んでいる。

その後、わたしたちはほとんどいつもタクシーで走り回った。シュタインはルートごとに違う音楽を用意していた。州道にはウェーンを、街の中心部にはデビッド・ボウイを、大通りにはバッハを。トランスAMは高速道路でだけかけた。わたしたちはほとんどいつも高速道路を走った。初雪が降ったとき、シュタインはサービスエリアごとに車から降り、雪の積もった畑地に走り出て、ゆっくりと集中して太極拳の動きをやった。わたしはしまいに笑いながら怒り出し、戻ってきなさいよ、先に行こうよ、寒いんだから、と叫んだ。
(松永美穂訳)


そう、こういうやつがいるんだよね。この小説に登場するシュタインという人物は、たぶん誰からも"しまいに笑いながら怒り出されてしまう"、そんな男だと思う。そんな男とつきあっている"わたし"の一人称で語られる物語は、当然ながら、笑いと悲しみにあふれていて、静かな口調で淡々と綴られている話であるにもかかわらず、おしまいにはやはりずうんとこころを揺さぶられてしまう。    もちろん、二つ目の作品集「幽霊コレクター」も読んでみたいなと思わせるだけの魅力に捕まってしまったのでありました。



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