83.莫言 長安街のロバに乗った美女

「長安街のロバに乗った美女」 (1998)は、中短篇集『至福のとき』に収録の一作。
マジックリアリズムが中国に移植されると、こうなる!という、まさにそんな小説。
チャン・イーモウ監督による映画化!、というとついそちらに目が奪われそうになるが、いやいやこの小説の面白さときたら、かるうく映画なんかぶっ飛ばしてしまうと思うのだが、どうか。

自転車の山のなかから、侯七は自分の自転車を探しだした。ぼろ自転車だが、一日中地下鉄の駅にほったらかしにしてある自転車は、どれも似たり寄ったりのおんぼろだ。キーも壊れていて、三分もかかって、ようやくしぶしぶ開いた。自転車を引きだし、十数歩押して歩き、隙間を見つけてぶきっちょに跨った。そうして自転車の流れに乗って、長安街を抜けて家路につこうとしたとき、西の方角から騒ぎが聞こえてきた。(中略)
西のほうを振り向いた侯七の目に飛びこんできたのは……
紅い衣裳の若い女が、ぴかぴかのロバ  黒ロバ、小墨驢  に乗って傍若無人に赤信号を突っ切り、ほとんどくっつきあっている自動車の間を抜けて通りを渡っている光景だった。ロバのうしろには、馬に乗った男がすぐつづいていた。男は銀色の鎧兜に身を固め、胸の護心鏡がまぶしく白い光を放っていた。
(吉田富夫 訳)


著者あとがきによれば、あるとき読者からファンレターが届き、「この小説に出てくる美女と騎士は宇宙人だ」と丁寧な理由を挙げて証明してくれたそうだ。莫言は、そんなつもりで書いたのではなかったが、なんだか嬉しくなり、「そのとおり、二人は宇宙人です」と返事を書いたという。



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