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84.M・ケネディ 無用の殺人(湖底の自転車)

「無用の殺人」(1935)は、チェスタトン編の『探偵小説の世紀』(1935)に収録の一篇である。
このアンソロジーは、なんと1000頁超の大作。登場する作家も豪華絢爛。ところが邦訳は翻訳権の関係か、既訳のある作家・作品を除外しているため、ビッグネームの作品は含まれていない。結果的に、地味な中短編作家中心の構成となってしまっているのだが…。むしろこれが良かったか。1900年代前半の英国ミステリの黄金時代をよく映した作品が集まっていると思うのである。

…とある荒れ果てた納屋に難なくたどり着いた。戸を引きあけ、ポケットから懐中電燈を取り出して、中へ入る前に内部を照らした。彼は思わず満足のため息を洩らした  前回やってきて以後はほこりがかき乱された形跡はなかった。そこに自転車があることは誰にも気づかれていないとみてさしつかえなさそうだった。
その自転車については彼はずいぶん骨を折っていた  中古で買ったのだが、まだ調子は上々で、タイヤはすりへってはいるものの(だからすぐそれとわかるような跡はつかないし)、まだ寿命は充分あった。それを彼に売ったグロスターシャーの町の自転車屋は、その取引に格別の関心も払わなかったし、それにゴース・ヒルまでの輸送は何行程かに分けてゆっくりと目立たないようにやったのだった  立ち腐れの納屋までの最後の行程は、夜陰に乗じて行なった。納屋の中に積んであった砂の山が、その隠し場所を利用した痕跡をすっかりおおい隠す絶好の手段を提供してくれた。(真野明裕 訳)

ミルウォード・ケネディは、イギリスの本格黄金時代に活躍した一人。邦訳が少ないのは残念だが、この短編も気が利いていて、且つアイロニーに充ちている。技巧も鼻につかない程度に収めているのが心憎い。短編ながら、まさに英国本格ミステリのモデルのような作品だと思う。ところで、この作品は以前に「湖底の自転車」というタイトルで訳出されたことがあったらしい。わたしは断然そちらを支持するものである。引用部にある自転車を使ったアリバイ作りは、結局、成功したり無駄に終わったりするのだが。



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