85.ケリー・リンク 妖精のハンドバッグ

「妖精のハンドバッグ」(2004)は、彼女の第二短編集『マジック・フォー・ビギナーズ』に収録の一篇。基調はファンタジーである。主人公が少女であるので、YA向けのファンタジーと位置付けられるかもしれない。しかし、実際はそんな枠にはまらない何かけたはずれで型破りの小説だと思う。

ゾフィアは全然おばあちゃんみたいに見えなかった。長い黒髪を、いくつもの塔みたいにとんがらせて編んでいた。大きな青い目をしていた。あたしの父親より背が高かった。スパイかバレリーナか、女海賊かロックスターみたいに見えた。ふるまいもそんな感じだった。たとえば、どこへ行くにも絶対に車に乗らない。乗るのはいつも自転車。あたしの母親はよくそれでカッカしていた。「齢相応にやれないの?」と母親は言ったが、ゾフィアは笑うだけだった。(中略)
あたしの母親は、よく仕事から帰ってきて目を丸くしたものだ。「お母さん、またこの子たちにおとぎばなし聞かせてたの?」と母親は言った。「ジュヌヴィーヴ、あんたのおばあちゃんはとんでもない嘘つきなのよ」
そう言われるとゾフィアはスクラブルのボードを畳んで、あたしとジェイクに向かって肩をすくめた。「あたしは素晴らしい嘘つきだよ」とゾフィアは言った。「世界で最高の嘘つきだよ。約束しとくれ、あたしの言うことを一言も信じないって」
(柴田元幸 訳)


このあと、いよいよゾフィアが「妖精のハンドバッグ」のはなしを始める。バッグの中には、ひとつの国がまるごとしまい込まれているというのだが。そんな話、信じられる?でも仕方がない。読者っていうのは、いちど読みはじめたら、最後までまるごと読んでいくしかないんだって。

PS. 邦訳は「スペシャリストの帽子」、「マジック・フォー・ビギナーズ」の二冊。どちらも愉しさあふれる魅力的な短編集だと思う。三冊目の「Pretty Monsters」(2008)の訳出が待ち遠しい。



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