スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

1005. 血液と石鹸 (bicycles in fiction)


血液と石鹸2  血液と石鹸


リン・ディンは1963年、サイゴンに生まれ、70年代央にアメリカに移住。
英語で詩と小説を書く。
『血液と石鹸』 (2004)、は彼の第2短篇集である。
37の掌編、特徴は、皮肉と笑いと自虐。短くて小さな物語が並んでいる。
邦訳は柴田元幸訳、早川書房(2008)。

本を持ち歩いている人間は、未開社会であれ先進社会であれ、畏怖の念とまでは行かずとも、それなりの敬意を寄せられるものである。この事実を知るがゆえ、メコンデルタのただなかのファットダット村に住む無学の自転車修理工ピエール・ブイは、どこへ行くにも本を一冊持ち歩くようになった。
その魔力はてきめんであった。乞食や娼婦がパタッと声をかけてこなくなり、強盗にも襲われなくなったし、子供たちは彼の前では静かになった。
はじめは一冊しか持ち歩かなかったが、そのうちに、もっとたくさん持てばさらによい印象を与えるはずだと思いあたった。というわけで、いつも最低三冊は持ち運ぶようになった。祭日で街なかに人があふれるときなど、十冊あまり抱えていった。
(「本を持ち歩くこと」、柴田元幸訳)


引用した「本を持ち歩くこと」も、わずか2頁の短い作品である。
70年代のベトナムを舞台にした掌編、皮肉と笑いと自虐が特徴、とこれだけ書けば、たぶんこの物語の結末、落ちの部分もわかるはずだ。だが、予想通りだとしても、物語はきちんとあるべきところに着地し、ぼくらにある種の感銘を与えるのである。それは、リン・ディンの書く言葉や文章やレトリック、それ自体に皮肉と笑いと自虐が練り込まれているからだと思う。いわば、麺自体に味がついているパスタのようなものである。ソースやトッピングがなくとも、充分に美味しい。それは、彼が、詩を書くこととも関係があるのだと思う。



にほんブログ村 本ブログ 海外文学へ





関連記事
スポンサーサイト

⇒comment

Secret

被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新コメント
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。