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939. f植物園の巣穴 (Studies in Green)


f植物園の巣穴


梨木香歩の「f植物園の巣穴」(朝日新聞出版、2009)、
表紙と扉絵の美しい花の図版は、小石川植物園植物図(加藤竹斎)から借りたものだと書いてある。
それで思い出したのだが、小石川植物園には、たしかに大きな洞を持つ巨木がいっぱいあって、いかにも何かが巣くっているかのように見えた。美しい緑や、花に酔いしれていると、そんな巣穴のひとつに落ちてしまって迷い込んで、どこか異界の方にワープしてしまうのかもしれない。

歯痛に悩む植物園の園丁がある日、巣穴に落ちると、そこは異界だった。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神……。人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、私はゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。怪しくものびやかな21世紀の異界譚。(朝日新聞出版、解説)


という出版社の解説とは異なり、これは異界譚ではない。と思う。
いかにも異界譚を繰り広げるようなふりをして、実は、単純な「私小説」のようなものでもあって、なんのことはない、いつかどこかで失ってしまった自分を、喪なわれてしまった自己を、苦心惨憺の上、異界を彷徨ったり、過去と現在をワープしたりした上で、どうにか取り戻すという物語なのである。
ありふれたテーマ、ありふれた自己再確認の物語も、梨木さんの手にかかると、こんなにもまわりくどく(失礼)、そして奇妙で不思議で、読み手の脳を特製の毒で痺れさせるような物語に仕上げられてしまう。まあいいさ、梨木ファンとしてはこんなものもあんなものも丸ごと引き受けて、充分に楽しめるくらいの度量があるってものさ。



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