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763. 銃、ときどき音楽/ジョナサン・レセム(ぼくらの本が歌う時)


銃、ときどき音楽


ジョナサン・レセムの「銃、ときどき音楽」を読む。
レセムは、第一長編の本作(94年)で、ローカス賞を取り、第五作の「マザーレス・ブルックリン」(99年)で、全米書評家協会賞を受賞している。日本でいえば、デビュー作でメフィスト賞を取り、後に三島由紀夫賞を取った舞城王太郎のような作家か?いや、知ったかぶりは止めて、単に、既成のジャンルを超えた作品を書いてきた作家だとだけ書けば良かった。

おれがほしかったものは過去で失われたわけではない。一度も失われたことはない。それは未来で失われている。そうなるべきだったのに、そうならなかったおれ自身。おれがその意味に気づかず、それなしで生きられると考え、自分のなかで手放した一本の糸。
(「銃、ときどき音楽」、浅倉久志訳)


「銃、ときどき音楽」、近未来のサンフランシスコを舞台に、クールで、しがない民間検問士(私立探偵のようなものだ)の活躍を描いた小説。つまり、私の大好きな私立探偵/ハードボイルドものだ。さらに、近未来小説ということは、SF仕立てだということだ。
といっても、奇作の類ではない。この小説は、90年代のハードボイルド・探偵小説の秀作の一つだと私は思う。
この小説の場所から、少しSFの方向を見れば、ディックやギブスンがいるし、ハードボイルドの方向を振り替えれば、チャンドラーやロスマクがいる。ただ、それでも、この作品を読むと、「SFミステリ」というジャンル自体が持つ怪しさを感じなくもない。
実際に、「銃、ときどき音楽」も、"怪しい"部分があるのである。
敵役の一人は、せこいカンガルーの殺し屋であるし(獣人化技術の進捗)、主人公は、ガールフレンドに男性の快感神経終末を持ち逃げされる(代わりに女性の快感神経終末を得る)、などというだらしのないクールガイであるという設定。
まあ、本格ミステリファンの側からは、バカミスだと断言されても仕方がないような部分があったりするのも事実だ。
でも、誤解しないように、この小説は、快作だ。SFとミステリが見事にまだら模様に融合し、クールでシニカルな近未来の探偵をイキイキと描きだしている。イキイキしていると同時に、悲しみと喪失感で壊れそうになる近未来の世界と探偵の姿を、クリアに描いている。間違いなく、90年代のハードボイルド・探偵小説の秀作の一つだと私は思うのである。


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