93.フランク・オコナー ある独身男のお話

「ある独身男のお話」(1955) は、岩波文庫版 『フランク・オコナー短篇集』 に収録の一篇。
主人公は、年とった独身男のアーチー。自分の女嫌いの元となった若いころの出来事を、友人に向かって話し始めるところから物語は始まる。

アーチーは若い頃、大のサイクリング好きだった。アイルランド一周旅行を二度もやっていたし、さまざまな史跡や古戦場、城、大聖堂などを見るためにはるばる自転車で出かけていくこともしょっちゅうだった。学問があるというわけではなかったが、物事の背景を勉強するのは好きだったし、相手の無知を思い知らせることにも躊躇はしなかった。「な、ジェームズ、君、ほんとにその場所のことを知ってるんだよね?」仕事場で誰かがうっかりぼろを出すと、アーチーは意地悪そうに言ったものだった。「もし知らないんなら、教えてあげてもいいけど」。むろん、彼は同僚からは疎まれていた。(阿部公彦 訳)


このあといよいよ女性から酷い目に遭わされたという経験が語られていくのであるが、しかし、その話を聞くにつれ、いったいほんとうに悪かったのは二股、三股をかけていたというその女性なのか、それともアーチーの方なのか、なんだかよくわからなくなってしまう。アーチーについても、・・・まわりから疎まれてはいるのだろうが、それほど悪い人間ではなさそうな気がしてくるのである。その辺の謎のかけかた、人間の描き方が、オコナーはとても巧みなのである。
・・・アーチーについては、トオマス・マンが書いた「小フリイデマン氏」を、ちょっと思い出した。比較するとアーチーの方が、まだましではないか、元気を出せよと。


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