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96.ジェイムズ・ジョイス 恩寵

「恩寵」(1914)は、連作短篇集『ダブリン市民』に収録の一篇である。
小品ながら、含まれているものは大きい。大きすぎて手にあまるほどである。
都市論から信仰の問題まで、情愛から諦念まで、少年から下宿屋の女将やパブに入り浸る男たちまであらゆるダブリナーズの意識や生きざまを描き出す。

そのとき、手洗いにいた二人の紳士が彼を起そうとした。だが、なんの力もなかった。彼は、その落ちた階段の下に、身を丸くしたままだった。二人は、彼を仰向けにさせた。
(中略)
「このかたひとりだったのかい?」とマネージャー。
「いいえ、おつれが二人あったようです」
「で、その人たちはどこへ行ったのかね?」
だれも知らなかった。(中略)
自転車服を着た若い男が、見物人の輪を押しわけていった。彼は、敏活に怪我した男のそばに膝をついて、水を頼んだ、巡査もまた、手をかそうと膝をついた。若い男は、怪我した男の口から血を洗い取り、それから、ブランデーを持ってくるように言った。
(安藤一郎訳)


・・・酔っ払った男が階段の下で倒れて怪我をしている。だが誰も助けようとしない。連れがいたはずなのに姿を消したのか見当たらない。見学者ばかりである。様子をうかがっているものばかりである。ようやく自転車服を着た若い男があらわれて親切に手当てをしてくれる。

だいたい、いきなり登場するこの「自転車服の男」というのがよくわからない。何の象徴なのか何かのメタファーなのか。いやその前に、この作品のタイトルの「恩寵(Grace)」という言葉がまずわからない。神から恵まれたものはなにか。あるいは「恩寵」とは反語なのか。あああ難儀な作品を読んでしまったものであるといちどため息をつくふりをしてから本を閉じた。やっぱりジョイスっておもしろいね。


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