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99.クレア・キーガン 降伏

アイルランドというと一番に「スティーヴ・キャレラ」を思い浮かべてきた我が読書人生を、少し反省気味の今日この頃である。それくらい素晴らしい小説を読み過ごしてきたという感じ。ジョイスやブロンテ姉妹やオコナーやオブライエンまで遡らずとも、アリステア・マクラウドやジョン・バンヴィルやトレヴァーやマクガハンやマコート等々、強力な書き手が揃う。そしてクレア・キーガンのような若い作家を含めて、今や書店の海外文学の棚はアイルランド系作家の作品が席捲している。
・・・というのはちょっと大袈裟かもしれないが、わたしのように遅れてきた読者の中ではそんな感じなのである。

部屋は暖かかった、そろそろチェーンも乾いているだろう。暖炉の火が、自転車のリムを、ハンドルを、スポークを照らした。巡査部長は自転車を上下逆さまに置き、片手でゆっくりペダルを回しながら、オイル缶のノズルをチェーンに当てた。オイルを差しながらチェーンが回るのを眺めていると、鎖の輪が歯車にきちっとおさまり、歯車の歯がチェーンに合うように作られていることに、彼は感心した。(中略)
今、巡査部長は、自分の自転車があることが子どものように誇らしかった。元の向きに戻し、タイヤに空気を入れると、体がほてって満ち足りた気分になった。遠乗りの体重を支えられるかどうか確かめると、自転車を机にもたせかけた。(岩本正恵 訳)


「降伏」(2007) は、大好きなクレア・キーガンの短篇集 『青い野を歩く』 の中の一篇である。・・・主人公は、とある田舎町の巡査部長。いつも自転車で町の中を走る。とりわけ大きな出来事や事件が起こるわけではない。自転車がなにか特別な主題になっているわけでもない。でもなぜか読み終わって何年も経つのに、この巡査部長が自転車で走る姿が強く記憶に残っている。そんな話しなのである。

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「bicycles in fiction」の完結、おめでとうございます。すごいと言うか、もうなんと言うか……。
すこし寂しい気もしますが、今度のテーマも愛書狂にはよだれものなので、とても楽しみです。
『超男性』、面白いですよね。小難しいことを考えずに腹を抱えながら読める一冊として、今後も読み継がれていってもらいたいものです。国書刊行会が準備している(と、ごく一部で囁かれている)『ジャリ全集』の刊行が待ち遠しいです。

おはようございます

『ジャリ全集』、たしかに待ち遠しいです。
いつか刊行されれば、その時分には、わたしも「bicycles in fictionⅡ」を書いてみようかな、と思います。
コメント、ありがとうございました。

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