100.ジョナサン・キャロル 炎の眠り

偏愛するキャロル、「炎の眠り」(1988)は彼の長編第四作である。
第二作の「月の骨」と主題や登場人物が共通する部分があることから、〈〈月の骨シリーズ〉〉の一作として位置付けられることもあるようだが、それが適切かどうか?
そんなことよりも、キャロルの長編はどれも独特の味わいと趣があってそれぞれの作品が比類のない傑作であると、そう書いておきたいのである。

…ふいに通りの行く手に人影がぬっと姿を現わした。自転車に乗った男とわかるまでちょっとかかった。車体が吹き流しやミラー、サドルバッグ、バンパー・ステッカー、アンテナその他あらゆる物のごた混ぜで、ぴかぴかに飾り立てられていたのだ。男はがたがたの竹馬小僧(グリム童話の一つの主人公)のような長い顎髭を生やしている。頭と耳の大部分を隠し、アラスカの木こりを思わせる例の丸い毛皮帽を被って。車体が左右に振れるほど猛烈にペダルを漕ぎながら、死、もしくは正気が真後ろに迫っているみたいに突進してくる。自転車の風を切る音と男の大きな息遣いを除けば、通りはしんとしている。ぼくは左右のどっちへ行けば避けられるか、それもわからないほど疲れていた。近づくにつれて顔立ちがはっきりする。皺や筋が何本も刻まれている。(中略)
「レドナクセラ!よく戻ってきた!」男はどなった。
(浅羽莢子訳)

 
この「自転車の男」が、最初から最後まで、物語の要所要所で現れてくる (現れてほしくなんかないのに)。現れては、不気味で奇妙な声を投げかけてくる。
その謎を解かねばならない!自転車の男を追い払わねばならない!乱暴な要約だが、これはそんな話である。


( bicycles in fiction、完)





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