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108. 太宰のラプンツェル

「ろまん燈籠」(1940-41)は、太宰治の戦前の作品。入江家の五人の兄妹が、退屈しのぎに、ひとつの物語を書き継いでいくという話である。一見、短くて軽い小説のようだが、読みとおしてみると面白い家族小説になっているという趣向。巧みで気が利いている。・・・この日も、物語の遊戯が始まった。まず末弟が、一番手を志願し書き始める。ところが、想が湧いてこない。万事窮した彼は剽窃に走る。アンデルセンや、グリムや、ホオムズなどを読み漁り、あちこちから盗んでどうにかまとめ、次の長女にバトンを渡す。

きょうは二日である。一家そろって、お雑煮を食べてそれから長女ひとりは、すぐに自分の書斎へしりぞいた。純白の毛糸のセエタアの、胸には、黄色い小さな薔薇の造花をつけている。机の前に少し膝を崩して坐り、それから眼鏡をはずして、にやにや笑いながらハンケチで眼鏡の玉を、せっせと拭いた。それが終ってから、また眼鏡をかけ、眼を大袈裟にぱちくりとさせた。急に真面目な顔になり、坐り直して机に頬杖をつき、しばらく思いに沈んだ。やがて、万年筆を執って書きはじめた。
――恋愛の舞踏の終ったところから、つねに、真の物語がはじまります。(中略) 私たちの王子と、ラプンツェルも、お互い子供の時にちらと顔を見合せただけで、離れ難い愛着を感じ、たちまちわかれて共に 片時も忘れられず、苦労の末に、再び成人の姿で相逢う事が出来たのですが、この物語は決してこれだけでは終りませぬ。お知らせしなければならぬ事は、むしろその後の生活に在るのです。・・・


ここで書かれている物語の基は、なんとグリムの「ラプンツェル」である。塔にとらわれたおひめさまを助けるというはなし。わたしも大好きである。しかし、グリム版には不満がある。・・・高い塔に閉じ込められたお姫さまは、長い髪の毛をたらして下にいる王子を引き上げる。これでは助けに行くのではなくて、誘惑されたみたいではないか。こんな調子で騎士の物語と言えるのかどうか。太宰も入江家の末弟も、同じような不満を持ったのだろうか。

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