16.イーヴリン・ウォー 大転落

「大転落」(1928)、イーヴリン・ウォーの第一長編。
岩波書店のブックサーチャー欄を見ると、この作品は「抱腹絶倒の滑稽小説」であるという。しかし、これは明らかに間違いである。もっとクールで軽妙なものである。わたしの感想がおかしいのかとも思ったが、なーんだ岩波文庫版の訳者あとがきにもちゃんと書いてある。『ここには抱腹絶倒を誘う過剰な読者サービスはないし、深刻に人生の不条理をみつめるふうの黒いユーモアもない。にもかかわらず、これは端正な文体で書かれた、最も純良なイギリスのユーモア文学なのである。(富山太佳夫)』 ・・・ところでこの富山太佳夫さんによる「訳者あとがき」がとても素晴らしい。簡潔で明瞭、知りたいことは全て書いてあるといってもいいほどの「名」あとがきでありました。あえて言えば「オックスフォードの街の自転車事情」について触れてくれていればよかったなあ。でもそんなこと知りたいのはわたしだけかもしれないからまあいいや。

彼は、今夜自分を待ちうけている不測の事態のことなどつゆ知らず、国際連盟ユニオンの会合から幸福感につつまれて自転車で戻ってくるところであった。ポーランドでの国民投票について、とても興味深い発表を聞くことができたのだ。寝る前に、パイプを一服やりながら、『フォーサイト家年代記』の続きを一章読もうか、彼はそんなことを考えていた。彼は門をノックし、中に入れてもらい、自転車をしまい、いつものようにおずおずと中庭を横切って部屋に向かおうとした。…( 富山太佳夫訳)


このあと主人公のポール・ペニーフェザー君は、オックスフォードのスコーンカレッジを放校処分となり、まさに大転落の運命を進んでいく。この大転落の道筋がこの小説の読みどころであり、英国流のユーモア譚が小ネタあり、大ネタありで、次から次へと重ねられ、大笑したり苦笑いしたり充分に笑わせてくれる。文庫版で約300頁の長編、途中さすがに冗長かと言いたくなるような部分もあるが、後半また持ち直し、鮮やかに物語を閉じてくれるのだから言うことはない。それは見事な長編なのでありました。
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