スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

119. ウィリアム・トレヴァー グレイリスの遺産

短篇集『密会』に収録されているのは、どれも静かで淡々と語られる物語であるが、それでいて深みと力強さに溢れている。マキューアンの視点が「辛辣」であるとすれば、トレヴァーは「冷静」である。冷酷にならないぎりぎりのところで人間の物語を描いている。暗くてもの悲しい物語が多いのに読後感が悪くないのは、それをそのまま閉じずに、どこかに開いた出口を置いているからだと思う。

この町に図書館の分館をつくれと州の図書館部門にしつこく要求したのは、ハヴァーティ氏だった。それどころか、みずからその分館の初代館長となった。ハヴァーティ氏はロワー・ノース・ストリートで食料品店を営んでいたが失敗し、生涯独身を通した人で、アメリカの西部冒険小説を好み、とりわけゼイン・グレーの熱狂的ファンだった。当時はまだ本を借りる側だったグレイリスは、分館ができてまもない頃から、質素なこの建物に安らぎを感じた。壁という壁が棚で埋め尽くされ。ドアのそばには小さなカウンターがあった。彼は最も頻繁に分館を訪れる利用者だったが、しばらくして、急速に進む関節炎で任に耐えられなくなったハヴァーティ氏が、彼を後継者に指名した。はるかに将来性のある銀行から引き抜こうとしたのである。そしてグレイリスは、不利な点を考えてみることもなく、即座に了承した。「でも、いったいなぜ?」と、彼の結婚した女は途方に暮れ、落胆して叫んだ。(中野恵津子訳)


「グレイリスの遺産」(2004)は、短篇集『密会』に収録の一篇。図書館員の男をめぐる物語である。これを深津絵里さん主演で女性司書の話に置きなおして映画化してほしいというのがわたしの希望である。以前に、深津さんの司書姿を映画「阿修羅のごとく」で見たことがあって、ぜひあれをもういちど見たいと・・・、すみませんただの妄想でありました。
関連記事
スポンサーサイト

⇒comment

Secret

被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
04  12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新コメント
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。