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127. ポール・オースター ムーン・パレス

「ムーン・パレス」(1989)は、「ニューヨーク三部作」の後で書かれた長編である。当時、作者自身が「私がいままで書いた唯一のコメディ」と規定したという割には、なにかせつなげな青春小説のような調子で物語は始まっていく。
・・・物語の舞台は60年代のニューヨーク、「僕」は18歳でコロンビア大学に入学したばかりであるが、唯一の血縁である伯父を失ったこともあり、人生に絶望している。そんなとき、奇妙な老人の介護をするという仕事をみつけ、屋敷に住みこむことになる。

わしがくたばったら君がどうなるか心配だとエフィングは言ったが、大丈夫、一人で何とかなりますから、と僕は請けあった。
「君は夢想家だからなあ」と彼は言った。「君の心は月に行ってしまっておる。(中略)」
「計画はいろいろ立ててるんです」と僕は話をそらそうと嘘をついた。「去年の冬にコロンビアの図書館学科に願書を出しまして、こないだ合格通知が来ました。もうお話したかと思ってましたよ。秋に授業がはじまります」(中略)
「君が図書館員だなんて想像しにくいな、フォッグ」
「まあたしかに変ですけど、でも案外合ってるかもしれませんよ。考えてみれば、図書館というのは現実世界の一部じゃありませんからね。浮世離れした、純粋思考の聖域です。あそこなら僕も一生、月にいるまま生きていけますよ」(柴田元幸訳)


なにやら物語は滑稽であったり陰惨であったり複雑に展開していくが、初期のオースターの作品と同様に、基調は優しい青春小説なのである。「ニューヨーク三部作」の後の、確実に進化した物語作家としてのオースターが愉しめる。
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