136. セルバンテス ドン・キホーテ

「ドン・キホーテ」(1605)、何も説明の必要がない傑作中の傑作、四百年を経てなお愉しさにあふれる希有の書、岩波文庫版では全六冊に渡るので保存にも持ち運びにも不便な大長編、
・・・そんなふうに幾つでもとびきりの形容詞がつく作品であるが、本当のことを言うと、これがただの時代錯誤の騎士物語ではなくて、読書狂の男を主人公としたメタフィクションであり大ファンタジーであったとは、(とほほ、)長いあいだ知らなかったのである。

ドン・キホーテはまだ眠っていた。司祭が郷士の姪に、このたびの災いの元凶となった書物の保管されている部屋の鍵を乞うと、彼女は喜んでそれを手渡した。そこへ家政婦もやってきて、床屋と四人でいっしょに中に入ってみると、そこには立派な装丁の、どっしりと部厚い本が百冊以上も並んでおり、ほかに小型の本も何冊かあった。そうした本を目にするやいなや、家政婦はあわてふためいて書斎を出ていったが、すぐまた、聖水の入った大きな容器と灌水器を手にして戻ってくると、こう言った。   
「さあ、学士様、どうか聖水を撒いてこの部屋を清めてくださいまし。本のなかにうようよしている魔法使いどものなかには、あたしたちによってこの世から追放されようしていることを知って、その腹いせにあたしたちに妖術をかけようなんて奴がいるかも知れませんから。」
(牛島信明訳)


引用は、第一部第六章、有名な「ドン・キホーテの書斎」の場面。
ドン・キホーテは一度目の旅立ちで災難に会い故郷に戻っている。彼を心配したものたちは、災いの元はすべて彼の蔵書にあるとして、これを焼き払うことにする。なんと、焚書である!
でも仕方がないとも思うのである。たしかに本のなかには魔人や妖怪がうようよしている。

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