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156. 出久根達郎 御書物同心日記

徳川家康は無類の愛書家であったのだという。古い書物の収集に熱を上げ、集めた書物を、江戸城南、富士見之亭なる場所に納めた。のちにそれは城内紅葉山に移され、紅葉山文庫と称された。三代将軍家光は、この文庫の監督保護のために、御書物奉行及び御書物方同心という職掌を設けた。この小説のタイトル、「御書物同心日記」(1999)の由来となるものである。

むせかえるような青空になった。
「雨も降りあきたらしいな」
登城の挨拶をする丈太郎に、義父の栄蔵が、お天道さまの代弁のような軽口を叩いた。
「いよいよ御風干だな。粗相のないようにな」
「はい」と丈太郎は胸を張った。
ずいぶん降り続いた。そのため延び延びになっていた紅葉山文庫の、書物の虫干が、ようやく始まる。丈太郎たち御書物方同心にとっては、年に一度の大きな行事である。(中略)
五棹分を並べ終ると、丈太郎と角一郎は虫干の見張りを命じられた。(中略)二人は眠気ざましに、毛氈の書物を見てまわった。珍しいものばかりである。最初のうちは遠慮して、一、二枚をめくるだけだったが、めくると、面白そうな絵や文章がある。つい、眺めたり読んでしまう。ときどき時田が表に出てきて、二人の様子を見るが、別に何も言わない。
そこで堂々と読みふけった。日なたぼっこより、こちらの方こそ役得というものである。
(第六話、落鳥)


出久根さんの時代小説は、どれも力が抜けている。そこが何よりの面白さだ。まあメリハリが乏しい感じがしないでもないが、それよりもこのひょいとした感じを楽しむのがいいのだろう。おんな飛脚人シリーズしかり、猫の似づら絵師シリーズしかり、そしてこのシリーズもそうだ。いや中にはとんでもない大きな展開になる話もあるのだが、それはときたまのお楽しみとしておこう。

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