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159. トーマス・マン 魔の山

「魔の山」(1924)の主人公、青年ハンスが入ったアルプス山中のサナトリウムには、大きな図書室はなかった。

セテムブリーニはずっと青年に接近して低い声でこういった。「あなたは月日を浪費なさっていらっしゃって、それがどんなに恐ろしいことか、おわかりにはならないのですか。それは不自然で、あなたの本性にも背くものなのにね。(中略)時間は神々の賜物、人間がそれを利用するようにと貸し与えられた賜物なのです  エンジニア、人類の進歩のために利用するように」(中略)
彼は回れ右をして、ハンス・カストルプを玄関からとっつきの談話室へ連れこんだ。それは表玄関にいちばん近い談話室で、普通書きものとか読書のために使われているが、いまは誰もいなかった。明るい感じの円天井があり、壁は樫の板張りで、書棚があり、枠に挟んだ新聞が中央の机の上に置かれ、その回りに椅子が並んでいた。張出窓のアーチの下には、書物机が用意してあった。セテムブリーニ氏はその窓のひとつのところへ行った。ハンス・カストルプはそれに従った。ドアは開いたままだった。(高橋義孝訳)


・・・ここに、大きな図書室はなかった。しかし、20世紀最後の教養小説と位置付けられるからには、代わりになるものが必要だった。それは、「理性と道徳に絶対の信頼を置く」民主主義者のセテムブリーニと、「独裁によって神の国をうち樹てようとする」虚無主義者のナフタ、という二人の先達であった。青年の精神の彷徨を描いた小説は山ほどあるわけであるが、それらがすべて教養小説だというわけではない。「魔の山」が教養小説たる所以は、この二人の魅力的で悪魔的な思想家が、哲学を説き、国家論を論じ、人間論を語りまくるという、そのことにあるのだろうか、などと思ったりした。


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