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175. 岡本綺堂 半七捕物帳・お文の魂

江戸には図書館はなかった。しかし、同じ機能のものはあった。お殿様には文庫があり、街には貸本屋があったのである。・・・岡本綺堂、半七捕物帳の第一作「お文の魂」(1917)にも、この貸本屋が登場する。

「どうだらう。巧くその幽靈の正體を突き止める工夫はあるまいか。幽靈の身許が判つて、その法事供養でもして遣れば、それでよからうと思ふんだが・・・。」
「まあ、さうですねえ。」と、半七は首をかしげてしばらく考へてゐた。「ねえ、旦那。幽靈はほんたうに出るんでせうか。」
「さあ。」と、をぢさんも返事に困つた。「まあ、出ると云ふんだが・・・。私も見た譯ぢやない。」
半七は又默つて煙草を喫つてゐた。
「その幽靈といふのは武家の召使らしい風をして、水だらけになつてゐるんですね。早く云へば皿屋敷のお菊を何うかしたやうな形なんですね。」
「まあ、さうらしい。」
「あの御屋敷では草雙紙のやうなものを御覽になりますか。」と、半七はだしぬけに思ひも付かないことを訊いた。
「主人は嫌ひだが、奥では讀むらしい。直きこの近所の田島屋といふ貸本屋が出入りのやうだ。」
・・・・・・


「お文の魂」は、このあと六十余話に及ぶこの捕物帖の導入部にあたる一篇である。ここではまだ半七老人は直接には登場せず、その鮮やかな謎解きの事例が又聞きのかたちで紹介されるのみである。それにもかかわらず、語り口のみごとさと、あざやかな江戸の情緒の表現は、すでにこの第一作から顕在している。末尾の『彼は江戸時代に於ける隱れたシヤアロツク・ホームズであつた。』という一文にさしかかると、愉しくて堪らず手を拍ちたくなった。


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