176. レイ・ブラッドベリ 華氏451度

「華氏451度」(1953)は、いわば、SFの古典のひとつ。あらゆる書物が禁じられる未来世界の中で、焚書役を務める男の姿を描く。テレビによる文化の破壊に対する警鐘の意味もあったらしい。作家自身は、この物語を書くとき、『四、五世紀のちにやってくるかもしれない世界』を描いたつもりだったとしているが、実際にはそれはあっというまにやってきたのかもしれない?!

「で、あなた方の同志は、何人ぐらいいるのですか?」
「あちらこちらの道の上に、見捨てられた線路の上に、今夜現在で、数千人はおるよ。見かけはただの浮浪者にすぎんが、頭のなかは、それぞれ図書館だ。じつをいうと、これも最初から計画して、こうなったわけでない。それぞれ、ひとりひとりに、おぼえておきたい書物があったもので、こういうプランを思いついた。あれからすでに、二十何年というながいあいだ、わしたちは放浪をつづけ、同志に出会うにつれ、その数が徐々にましていった。そして、よりあつまって、だいたいの組織をつくりあげ、さらに精密な計画を練ったというわけだ。ただひとつ、わしたちにとって、忘れてならぬ重要なことは、わしたちだけが衆にすぐれた存在だというわけでない点だ。けっして、衒学者になってはならん。わしたちだけが、このひろい世間で、もっともすぐれた人間だなどと、夢にも思いはしなかった。いわば、わしたちは、書物のほこりよけのカバーみたいなもの、それ以上、なんの意味ももってはおらんのだ。(宇野利泰訳)


「華氏451度」は、1966年にフランソワ・トリュフォー監督によって映画化された。出来あがった映画は、美しく、書物愛にみちあふれてはいるものの、少し奇妙なかたちに変形されて、SF譚からは遠ざかってしまったかもしれない。それに、ラストシーンは、より暗く静かなトーンで綴られる小説版の方が、わたしは好きなのである。



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