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181. ヘミングウェイ 兵士の故郷

「兵士の故郷」は、初期短編集『われらの時代』(1924)に収録の一篇。戦争から帰還してきた青年の姿を、簡潔な文章で描いた短いスケッチのような作品である。簡潔で短い作品であるゆえに、余計に、ここで描かれた青年の喪失感が響いてくる。

クレブズは、最初、戦争の話はいっさいしたがらなかった。あとになって、話す必要を感じたが、だれも聞きたがらなかった。町の人たちは、残虐な話をいやというほど聞かされていたので、実際の経験を話しても、すこしも心を動かさなくなっていた。耳を傾けて聞いてもらうためには嘘をつかなければならないことを知った。二度ばかりそんなつくり話をしてからは、クレブズ自身、戦争や戦争の話に反撥を感じた。つくり話をやったために、戦争ちゅう彼の身に起ったすべてのことに嫌悪を感じるようになった。それを思いだすたびに、心が清らかに、すがすがしくなる、いくつかの時期  たった一つのこと、やろうと思えば何か別のことができたかもしれないのに、男としてなすべきたった一つのことを、単純に、自然にやりとげた遠く過ぎ去った時期のすべてが、いまはそのすがすがしい貴重な性質をうしない、やがてひとりでに消えてしまったのだ。(中略)
そのような期間、もう夏も終りに近いころだったが、彼は朝おそくまでベッドに寝ていて、起きると、本を借りに下町の図書館まで歩いてゆき、家で昼食を食べ、表のポーチであきるまで本を読み、それから町を通りぬけて玉突き場へ行って、昼のいちばん暑い時間を、そこの涼しい日陰ですごした。
(大久保康雄訳)


引用部には、この短編のなかでは、めずらしく長く複雑なセンテンスが含まれている。長く複雑な文章になったのにはわけがあるのであって、  特に、『やろうと思えば何か別のことができたかもしれないのに、・・・』の表現には、不覚にもちょっとこころを揺さぶられました。ハードボイルドだといわれる所以はこのあたりにあるのだろうか。


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