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196. シュテファン・ツヴァイク 書痴メンデル

「書痴メンデル」(1929)、邦訳はみすず書房版『ツヴァイク全集3巻』に収録。第一次大戦下のウィーンを舞台に、カフェの一隅に坐りつづけた一人の書痴の姿を描いた短編である。

こうやって思うさまうっぷんを晴らしたので、固さがほぐれ、彼は心安く手まねきして、メモをいっぱい書きこんだ大理石の角テーブルに私をはじめて呼んだ。私にはまだ見当のつかない、愛書家の啓示の祭壇である。私はいそいで希望をのべた。磁気説に関する同時代人の著作、および後世のあらゆる著作、メスメルにたいする賛否の論争を手に入れたいというわけである。話しおえると、メンデルは射撃する前の射手そっくりに一秒ほど左の目をつぶった。しかし注意力を集中するこういうしぐさは、ほんとうにただの一秒しかつづかなかった。そのあとすぐに、目に見えないカタログから読みあげるように、二、三十冊の本をすらすらと数えあげた。しかもその一冊一冊について、出版社の名と発行年、だいたいの値段を言ってのけたのである。私は唖然とした。予期してはいたものの、まさかこんなにみごとだとは思っていなかった。しかし、私の唖然たるようすが彼には快かったらしい。なぜなら彼はすぐに記憶のキイをたたいて、私の主題のみごとな図書館司書的変奏を演奏しつづけたからである。あなたは夢遊病学者のことも知りたくはありませんか?・・・
(関楠生訳)


書痴といいながら、この人物を変人として描いたのではないというところが、この物語の読ませどころである。ツヴァイク自身が戦争に大きく運命を揺さぶられたことを思うと、余計にこころに沁みる。短いものの、非常に味わい深い一篇である。

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