199. ワシントン・アーヴィング アルハンブラ物語

この古い、夢見ているような宮殿には、美しいものならなんでもあった。しかし・・・。

わたしは、このオリエントの美的趣味と壮麗さの一大記念碑を遺し、いまもその名を壁面にとどめているモーロの王たちのことを、是非とも知らなければと思った。この好奇心を満足させようと思い立ったわたしは、見るもの、聞くものが、たちまち幻想の色調を帯びてくる、この空想と物語の場所から下って、グラナダ大学のイエズス会図書館へと赴き、古い文献をひもといてみることにした。
かつては、知の宝庫をもってみずから任じたこの図書館も、いまは、昔日の面影をわずかに残すのみだ。フランス軍がグラナダを占拠していた時期に、写本や貴重な文献をことごとく本国へ持ち帰ってしまったからである。しかし、フランス軍がさすがに気を使って残していった、イエズス会神父たちの膨大な、重苦しい文書が納められた一室に、スペイン語で記された伝承関係の小冊子数点と、わたしには何にも替え難いほど値打ちのある、相当数の古い羊皮紙綴じの年代記が眠っていた。
わたしは以後、この古色蒼然とした図書館をたびたび訪ね、静かに、だれにも邪魔されずに、心ゆくまで年代記をひもとき、楽しい時間を過ごした。
(「アルハンブラ物語」(1832,1851)、平沼孝之訳)


しかし、アーヴィングは、古い書物や文献を見るために、丘を下りてグラナダ大学のイエズス会図書館へ何度も通っている。この宮殿の中には、果たして図書室はなかったのだろうか?

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アルハンブラ宮殿の図書館

こんばんは。
「アルハンブラ物語」は大好きなんです♪これは岩波文庫の方ですよね?
アルハンブラ宮殿は、いつか行ってみたい場所なんです。今は一部がホテルとして利用されているのですが(レストランとカフェもあるみたい)、すごい人気でなかなか予約がとれないのだとか。

アーヴィングの時代には、おそらく宮殿に図書室はなかったろうと思います。正確には部屋はあったとしても空っぽで、書物はなかったと思うのです。

私が想像するに、イスラム時代のグラナダは、図書館としての単体の施設があったか、マドラサ(学院)に図書室があったか、どちらかではないかと思うのです。
ちなみに、イスラム時代の10世紀のコルドバはアンダルス最大の都市だったそうで、70の図書館があったらしいです。

ただ、アルハンブラ宮殿に書庫はあったと思うんですよ。
宮殿内で詩や文学が盛んであったというし、そうした詩や旅行記などの報告書が太守に献呈されたろうから、それらを保管する書庫があったと思うのです。
最後の太守ボアブデルが宮殿を退去するときに、書物を持ち去ったかもしれませんが、グラナダが陥落した後の1499年にスペイン王国によるイスラム書物の焚書が行われているので、この時点で多くの書物が失われてしまったか国外に散逸したのではないのかなと思っています。

Re: アルハンブラ宮殿の図書館

こんにちは
コメント、ありがとうございました。
図書室の件で書いていただいたこと、なるほどと思いながら読ませていただきました。
「アルハンブラ物語」は、わたしも大好きな作品で、読むたびに行きたいなと思いはつのるばかり。ようやく二年前に、見ることができました。それはもう・・・、まさに夢みているような宮殿でありました。そして今は、もういちど行きたいと、そればかり考えています^^

No title

おおっっ!!アルハンブラに行かれたのですね!うらやましいです~。
やっぱり素晴らしかったようですね。いいなあ、私も行ってみたいです。
夢はアルハンブラ宮殿で「アルハンブラ物語」を読むことです(笑)。

こんにちは

H2さま

もちろんというか、思ってた以上に美しくて魅了されつくしました。
夢はもういちど行くことです。(笑)


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