203. バルザック 才知ある人々に模範として・・・

「才知ある人々に模範として贈る二匹の虫の恋」(1842)、邦訳は水声社版の『バルザック幻想・怪奇小説選集』に収録。・・・動物寓話集のなかで一番長い話である。構成もちょっと込み入っていて、”エンジムシと人間の二つの恋愛譚が重なるかたちで進行する”ということが呑みこめるまでに時間がかかったかもしれない。でも呑み込めたらあとはもう愉しむばかり、鳥獣戯画を思わせるようなグランヴィルの挿絵と併せて、バルザックの寓意をたのしむばかりである。

ジャルペアドは、パリでいちばん奇天烈なものといえば自分自身だと思っていた。まるでヴェルサイユにおかれたジェノヴァの共和国の統領のようなものである。それに、彼は背丈が小さくスマートで、目鼻立ちの美しさで目立つ少年であった。たぶんすこしひょろ長い足だったが、宝石をちりばめ、三方がプレーヌのように反り返っているブーツを履いていた。祖国<カクトリアーヌ>のモードにならって、シャルル十世の聖別式の高位の聖職者の祭服も恥じるような聖歌隊長の祭服を背に引っかけていた。祭服はアラベスク模様におおわれ、青金石(ラピスラズリ)の地にダイヤがケシ粒のようにちりばめられ、サイドボードの両開きのとびらのように二等分に割れていた。(私市保彦訳)


それにしても、このアラベスク模様におおわれたラピスラズリの祭服!いちどこの眼で見たいものだ。例えば、パリではなく、時代も異なるが、アルハンブラの美しい宮殿にすくっと立つこの王子の姿を見てみたいものだと思う。・・・引用は第二章『ジャルペアド王子殿下』から。王子とは、祖国からパリに連れられてきたエンジムシの王子である。美しい赤色色素の原料として珍重されたエンジムシ(カイガラムシ)の王子が、青金色の祭服を身にまとうという皮肉さを笑おうというのではないので、念の為。わたしは、この美しい王子の姿と恋愛譚を、素直に楽しみたいと思うのである。

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