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206. ユイスマンス さかしま

「さかしま」(1884)の主人公のデ・ゼッサントは、パリを遁れ郊外に隠棲の居を構える。俗人や喧騒のみだりに侵入しない土地で、心の安らぎに浸ろうと目論んだのである。買い取った家に徹底的に手を入れ、そこに人工の理想郷を作り上げようとする。・・・そしてその世界で「青」は、重要な位置付けを持つ。

久しい以前から、彼は色調のあらわす真摯性および欺瞞性というものに精通していた。(中略)
彼が望んだのは、燈火の人工的な光に照らされて、はじめてその特色を遺憾なく発揮するような色彩であった。昼間の光のもとで、どんなに没趣味な色に見えようとも、それは彼の意に介するところではなかった。なぜなら、彼の生活はほとんど夜に限られていたからである。(中略)
そうしてみると、文学や芸術の訓練を受けた、洗練された鑑識眼の人間しか残らないことになる。理想を夢み、幻影を求め、寝台の行為にヴェールをかけることを要求する一部のひとの眼が、一般に青色や、それと同系統の色、たとえば葵色とか、藤色とか、真珠色とかによって慰められるのにちがいない、と彼には思われた。もっとも、そうであるためには、彼らが情に動かされやすい性質を失わず、彼らの人格を狂わせるような限界を越えず、より純粋な紫色へ、より生粋な灰色へと、その嗜好を変化させて行くことが必要であろう。
(澁澤龍彦訳)


かくして、青とオレンジ色を基調としたみごとな書斎ができあがる。当然ながらこのデ・ゼッサントの書斎は、ドン・キホーテが作り上げた騎士物語の殿堂とも、ネモ船長が有する壮大で実際的な図書室ともかけ離れた、神秘的象徴主義の所産である。書斎に並ぶのは、彼が愛する頽唐期のラテン文学であり、ボオドレエルでありマラルメであり、モロオなどの幻想絵画であり、珍奇な宝石や香料や花々である。この書斎のなかで、彼は、ひたすら感覚と趣味とを洗練させて人工的な夢幻の境に逃避しようとする。

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