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3. アンリ・トロワイヤ 自転車の怪

二人乗り自転車に憧れる。
いや女の子を後ろに乗っけて走るニケツではなくて、ちゃあんと前後にサドルが二つある自転車、タンデムってやつである。もちろんイメージ的には、後ろの座席で女性がペダルをまわしている、結局、そうなんだけどね。・・アンリ・トロワイヤの短編、「自転車の怪」(1939)では、フランスの田舎町のある夫婦が二人乗自転車を乗り回している。

それは細い銀の棒でできた、南京豆のようなかたちをした二人乗自転車であった。二つならんだハンドルは、しなやかで、しかもがっちりした線を描いて内側に曲っていた。見事な透し細工をほどこされ、真珠色のゴムをかぶせた四つのペダルは、脚で漕ぐのにはこの上なく具合よかった。(澁澤龍彦 訳)


そうそうそんなやつである。そんな自転車に乗って二人で何処かにでかけたい。普通は男が前を漕ぐらしいが、今や21世紀女性の世紀である、彼女が望めば前席を譲ってもいい、別に後ろからジロジロと眺めようってんじゃない。この小説でも、慧眼で健脚の夫人が前を漕ぎ、近眼であまり丈夫でない夫が後ろに控える。その位置関係を町の人に笑われたりする。それでも二人は楽しそうに自転車をこぐ。日曜日ごとに町の外に遠乗りに出かける。 『こうして二人して自転車のサドルに腰をのせているときくらい、この夫婦がお互いに近しく理解し合い、お互いに楽しく相通じ合い、そしてお互いに琴瑟相和していることをまざまざと感じることはないのだった。(澁澤訳)』ほらね、こんなふうな力が二人乗り自転車にはあるらしい。涸れつきた愛撫などよりもずっと確かな酔い心地を味わわせてくれるらしい。
そしてところがこの小説では、そんな蜜月が長続きしない。病弱だった夫が死んでしまうのである。残された夫人は喪服に身をつつみ、この自転車に乗りつづける。小さな十字架を胸に飾り途方もなく長い黒のヴェールをひらひらと流しながら自転車を走らせる。『えらいものだ、あれだけしてやりゃ、さぞかし故人も浮かばれるだろう』なんだ縁起でもない。二人乗り自転車に憧れたのはそんな顛末を望んだわけじゃない。なのに、このあと物語はどんどん奇怪な展開を深めていくのでありました・・・。

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