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23.ガルシア=マルケス わが悲しき娼婦たちの思い出

「わが悲しき娼婦たちの思い出」(2004)、この小説は、巻頭で川端康成の小説の一節を引用し、さらに「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた」という一行で始まる。まさにマルケス版「眠れる美女」というべき体裁なのである。

あの子のために最高級の自転車を買いに行ったが、少し試乗してみたいという誘惑に駆られて、百貨店のスロープをぐるぐる回ってみた。店員が年を訊いてきたので、老人特有のこびるような口調で、間もなく九十一歳になるんだ、と答えた。店員からは予測したとおりの返事が返ってきた。どう見ても七十代にしか見えませんよ。学校でおしえていた頃によく口にしていた言い回しを忘れずにいたことが不思議でならなかったが、ともかくそう言われて身体が浮き立つほどうれしくなった。歌が自然と口をついて出た。最初は自分のために小さな声でうたっていたが、その後偉大なカルーゾの気取ったうたい方を真似て大声を張り上げながら、雑多な店の並んでいる商店街や狂ったように車が走っている公設市場の間を自転車で走った。人々はそんな私を愉快そうに眺め、大声で話しかけたり車椅子でコロンビア一周自転車競走に参加したらどうだい、と声をかけてきた。私はそんな彼らに幸せな航海家のように手を振って応えたが、その間も歌をうたい続けた。その週に、十二月へのオマージュとして、《九十歳で自転車に乗って幸せになる方法》という大胆な記事を新たに書いた。(木村榮一 訳)


百年の孤独やエレンディラや予告された殺人の記録など、先に書かれた作品群と比べると、物語の密度は明らかに物足りない。しかし、目が眩むような文章は健在である。引用部のような文章、こんな調子の文章が続いて、いつのまにかガルシア=マルケスの世界に引きずりこまれてしまう。川端の主人公が少女の向こうに死の世界を見ているのに対し、ガルシア=マルケスの主人公は、見事に年を重ね、大いに生き続けている。これは、生きることをことほぐ「祝祭」の小説なのである。

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