スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

215. ジョルジュ・バタイユ 青空

「青空」(1935)は、バタイユの初期の長編。1957年に出版された。邦訳は晶文社版が「青空」、天沢退二郎訳、河出文庫版が「空の青み」、伊東守男訳というタイトルで刊行されている。訳文は、細部の煌めきで天沢さんが、全体の迫力で伊東さんのが優るとわたしは思うのだが、どうだろうか。

ぼくは車をおりた。頭上に星をちりばめた空が見えた。自分の身体にペン軸で傷をつけた少年は、それから二十年後、こうして、一度も来たことのない見知らぬ街で、空の下に立っている。どんな不可能なことが起るのか知らない。星が出ていた。無数の星が出ていた。ばかげていた。泣きたいほどばかげていた。だが、そのばかばかしさにはトゲがあった。早く夜が明けて、太陽が出てくればよいと思った。星が見えなくなる頃にはきっとぼくは街にいるだろうと思った。(中略)

そのまっ暗な夜、ぼくは光で酔っ払っていた。こうして、再び、ラザールはぼくにとって一羽の不吉な鳥、汚い、とるに足らぬ鳥でしかなくなった。ぼくの視線は、もう、現実に頭上で輝いている星々の間をではなく、正午の青空のなかをさまよっていた。ぼくは目を閉じて、その輝く青の中をさまよった。その青の中から巨大な昆虫どもが、ぶんぶん唸りながら竜巻のように姿を現わした。ちょうど翌日、輝きわたる正午、最初は見えるか見えないかの点となって、ドロテアをのせた飛行機が姿を現わすのと同じように・・・・・・。
(天沢退二郎訳)


1935年、スペイン戦争前夜に書かれたこの作品は、作家自身によって出版されるまで約20年間遺棄されていた。その20年余のあいだに、物語と文章は、発酵も熟成も、あるいは腐乱もせず、当時のままの姿で、再び現われたのだと思ったりする。それほど暗く冷たい場所で、この青空の下で苦悶するひとりの男の物語は、眠りつづけていたのだと思うのである。


関連記事
スポンサーサイト

⇒comment

Secret

被災地の学生を応援しよう!
プロフィール

jacksbeans

Author:jacksbeans
ようこそ!
記事のカテゴリ区分は、
①自転車、②図書室、③青、④メキシコ、⑤フルーツ、⑥階段、⑦画家、⑧スープ、⑨音楽、⑩綠、です



にほんブログ村 本ブログへ

ブログ村ランキング参加中、
クリックしていただけると幸いです。

カテゴリ
月別アーカイブ
04  12  09  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04 
検索フォーム
最新記事
PVアクセスランキング/海外文学
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。