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220. S・ミルハウザー 青いカーテンの向こうで

「青いカーテンの向こうで」は、ミルハウザーの第二短篇集『バーナム博物館』(1990)に収録の一篇。リアリズムの小説であると同時に幻想的で、記憶と夢が交叉しているようなところで描かれた物語がいっぱいに詰まっているというのは、先に記事を書いたダイベックの作品集と同じであるが、ミルハウザーの方がうんと幻想寄りではある。耽美的で、重層的で、幻影に満ちた博物館のなかに彷徨い込んだ気分にしてくれる。

夏のあいだ、父さんは土曜の午後にいつも僕を映画館に連れていってくれた。(中略)
僕は一つひとつの段階を存分に味わった。切符売り場の外の、暑い夏の太陽。次回上映作のポスターがガラスケースに収まり、ビロードのロープが張られた入口にさし込む陽ざし。赤いロビーの人工の光。場内の神秘的な薄暗がり、それがすうっと、取り返しようもなく暗くなっていく・・・・・・ そして、カーテンの青いひだがゆっくりと左右に分かれて、スクリーンが突如輝き出す。父さんはむずかしい顔をして僕に説明してくれた。スクリーンに映っている人たちは、動かない写真が目の前を次々に通り過ぎているだけなんだよと。(中略)
父さんの言うことはいつも正しい。でも今回は、父さんが僕を暗い知識に近づけまいとしているように思えてならなかった。カーテンの向こうにいる人々は、子供だましの動く絵本や、銀色のクリップで台所に吊るされた細長いグレーのネガなんかとは、全然別のものだった。彼らは僕の人生の届かないところで、高められた生を生きていた。どこかまったく違った、輝かしい、魅惑的な、測り知れぬ領域で。
(柴田元幸訳)


・・・或る日、少年は、いつもと異なり、独りで映画館に出かけることになった。この物語は、その日の映画館のなかでの出来事について描いている。いつもとはどこかまったく違った、輝かしい、魅惑的な、測り知れぬ領域に迷い込んだ一日について。



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