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222. カポーティ カメレオンのための音楽

「カメレオンのための音楽」(1980)は、同名の作品集に収録。晩年に書かれたこの短編集を読むと、少しこころが痛む。繊細で美しい文章とは、うつろいやすく傷つきやすいこころが書かせたものであるからこそ美しく、鮮やかで機知に富んでいてクールな視点を取らざるを得ないのは、書こうとしているものが、ダークで卑劣で邪悪なものであるということがわかっているからだ。・・・カポーティは、8才で作家を志向し、17才で「ニューヨーカー」誌のスタッフになり、19才のデビュー作「ミリアム」でオー・ヘンリー賞を受賞し、その後も美しい小説を書き続けた。しかし、66年の「冷血」の後は、80年の「カメレオンのための音楽」まで14年間、新たな作品が出せなかった。

「その黒鏡はゴーギャンのものだったんですの。そんなふうな鏡、十九世紀の画家の間ではごくありきたりのものでしてね、(中略)長いこと仕事し続けますと眼が疲れますでしょ、で、画家の皆さんは、こんな風な暗い鏡を見つめて眼を休ませたんですのね。(中略)眩しい日光で痛めた眼をいやすのに、私、ちょくちょく使います。落ち着きましてよ」
落ち着く、と同時にまた不安にもなる。鏡の暗闇は、長く覗き込むにつれ、一風変わった銀青色を呈し、秘めやかな幻想世界へ導こうとする。アリスと同じく、姿見を通り抜けて辿る旅路の入口の印象、手に取ることを少しためらわせる。(野坂昭如訳)


重要なのは、カポーティが最後まで美しい小説を書いたということだと思う。「冷血」から14年ぶりに出されたこの短編集は、みごとなほど冷徹で美しく完成度の高い作品ばかりで、乱れるところがない。23才で書いた「遠い声、遠い部屋」、26才で書いた「草の竪琴」・・・、それまでに書いてきたた作品と同様にみずみずしい小説を書いた。たぶん、最初の文章を書いた8才の時のままのイノセンスを晩年まで持ち続けてきたのだろう。読んで心が痛むのは、さすが強靭な作家の精神も、やはりうつろったりさまよったり戦ったりして、傷だらけになったように感じてしまうからだ。



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