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233. アーネスト・ヘミングウェイ 老人と海

「老人と海」(1952)、ヘミングウェイ、53歳の作品。
この年、二度の飛行機事故にあう。結果的に、これが、生前に発表された最後の長編になった。

老人の四肢はやせこけ、項には深い皺が刻みこまれていた。熱帯の海が反射する太陽の熱で、老人の頬には皮膚癌を思わせる褐色のしみができ、それが顔の両側にずっと下のほうまで点々とひろがっている。両手にはところどころ深い傷痕が見える。綱を操って大魚をとらえるときにできたものだ。が、いずれも新しい傷ではない。魚の棲まぬ砂漠の蝕壊地帯のように古く乾からびていた。
この男に関するかぎり、なにもかも古かった。ただ眼だけがちがう。それは海とおなじ色をたたえ、不屈な生気をみなぎらせていた。
(福田恆存訳)



こんなふうに引用部を書き写していて、唸ることになるのは、ナボコフとヘミングウェイの文章が筆頭である。その魔力のような文体に惹かれて止められなくなる。もちろん英文でやってみても同じである。悪しきドラッグのように病みつきになる。ヘミングウェイの方が、より性質が悪いかもしれない。簡単に真似ができそうに思ってしまうからである。悪しきドラッグの場合のように、誰か止めてくれる人を傍に用意しておくべきである。


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